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2018年7月 7日 (土)

林業のあり方(その8)

日本林業のあり方(その8)
第2章 日本林業の大転換を(その3)
第3節 木は太らせて使え

長伐期化は、木を太くして利用することであり、木材の利用範囲は大幅に広がる。

短伐期・皆伐が考え出された戦後間もなくの木材利用は、当時の需要をそのまま反映させていた。当時は戦後の復興需要で住宅建設が急がれた時代であり、質より量が優先された。木材需要もスギやヒノキの3寸5分(10・5センチ)ないしは4寸(12センチ)角の柱を大量に供給することが急がれた。ちょうどその柱がとれるような太さになる伐期が40〜50年だった。

ところが現在、木材利用を取り巻く環境は大きく異なっている。
当時、グリーン材(乾燥していない材)利用だった構造材も、阪神・淡路大震災を契機に乾燥や強度、寸法精度等に対する性能要件が厳しくなって、人工乾燥が必須となった。
また、住宅工法も柱を見せる真壁工法から、木質ボードで壁面を覆い柱が見えなくなる大壁工法へとシフトした。柱などの構造材については乾燥や強度などの品質に対する要件が厳しくなる一方、無節の柱といった伝統的な価値観が求められる材の需要は少なくなっている。この結果、天然無垢材より狂いが少なく、強度も高い集成材へ需要がシフトしてきている。
木材利用はまた、柱材にとどまらず、梁やケタなど多様である。内装材や家具材などの需要もある。合板や木質ボードなど、戦後間もないころには思いもよらなかった木の利用方法が増え、その需要も巨大化している。
ところが、短伐期・皆伐から生産される材は一定の太さ以下のものにならざるを得ず、芯を中心に柱用に製材するいわゆる芯持ち材を中心とした利用しかできない。このため、太さが要求される梁やケタ、見た目の品質を要求される内装材などにそのまま用いることができない。
しかも、芯持ち柱の利用では、年々厳しくなる乾燥や強度など性能要件への対応が困難になってきている。構造材として使うためには人工乾燥が必須だが、スギは特に芯の部分と芯以外で含水率や材の強度が異なるため、乾燥する過程ではひびやそり、割れなどの狂いが出やすく、品質管理が難しいからだ。

それならば、スギを無垢材の柱として用いるのではなく、乾燥した板を張り合わせた集成材として利用すればいいのではないかという意見も出てこよう。確かに、集成材にすれば、板にして乾燥するから乾燥しやすいし、強度も出ることから、スギの弱点であるヤング係数(木材の強度を表す指標。数値が大きいほど強度がある)の低さも解消される。

ところが集成材は丸太を板にして乾燥・カンナがけして貼り合わせることから多段階工程になる。その結果、丸太の製品歩留まりは3割程度にしかならないから、集成材は無垢材の製品に比べて必然的に割高にならざるを得ない。

以上のような問題は、伐期を長期化すれば自ずと解消される部分が大きい。大径材になれば品質も向上し、無垢材で利用できるようなる一方、効率的で多様な木材利用が可能となるため、材価にそれを反映できるからである。
たとえば、ある製材会社が行なったスギの林齢別のヤング係数に関する実験データによると林齢の高いスギはヤング係数も上がるという分析結果が出ている。そうであれば今のスギのヤング係数が低いのは弱齢林が多いことと密接に関係していることになる。

短伐期・皆伐による無垢材では、細く、芯を中心にして製材する芯持ち利用しかできず、これが品質向上の足かせになっている。しかし、大径材化していけば、芯を外した利用が可能になるため乾燥はずっと容易となり、品質も安定することから、利用可能性は大幅に広がる。

この点、長伐期化によって合理的な木材利用が確立しているドイツと比べるとわかりやすい。
日本では、欧州の木材利用は板材が中心と見られているが、ドイツの構造材の種類を見ると、日本の柱に相当する12×12センチはもちろん、梁やケタのサイズまで規格は多様である。実際、ドイツの工務店や住宅メーカーの工場で見る構造材は日本の柱よりはずっと太いし、その規格もさまざまである。

ドイツでは大径材が大量に生産されることから、節が少なく、見栄えがいい材の調達が容易で、内装材や家具材としても利用も盛んである。また、無節で質の高い材は、高気密高断熱性能が要求される窓のサッシなどにも利用されるなど、用途は多様である。

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