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2018年7月 3日 (火)

林業のあり方(その5)

日本林業のあり方(その5)
第1章 問題だらけの日本林業(その3)
第3節 無秩序な林業用道路

もし路網がなかったら、作業するにも歩いていかなければならず、育った木を運びさすこともできない。膨大な森林面積を維持管理していくためには、整備された林内路網が不可欠である。ところが、日本の路網は問題だらけである。

路網はそもそも、地域森林全体を合理的に管理することを前提とした基本設計の上に整備される必要がある。具体的には、その地域全体を見渡して、どこまでトラックの通れる林道を整備するのか、どこから先は林業機械専用の作業道にするのかというグランドデザインである。
ところが、現実にはグランドデザインなしに場当たり的に作れるところに道をつくることが行われており、作ることの自己目的化が常態となっている。これではカネをいくらつぎ込んでも、まともな林業用の路網は整備されない。
また、その作り方も問題だらけである。かって批判されたスーパー林道や大規模林道は論外としても、現状の林道は設計者が公道と同様の発想で、自動車が無理なく走れるようにできるだけまっすぐに道を通すことを目的として山を切り崩して作るのが一般的である。こうした作り方では、土砂を大量に動かしたり、岩盤が現れた場合もそれを回避するのではなく、破砕して設計通りに作るので、巨額の建設経費がかかる上、集中豪雨などで壊れやすくなる。このような道は、環境に莫大な負担がかけることはもちろん、維持管理に巨額のカネがかかり続ける。林道とは名ばかりで、林業用に使うには無理がある。
このような道ができてしまうのは、林業用の路網のはずなのに、設計士が公道の延長でしか設計しない、実際に道を作るオペレータが訓練を受けていないから、現場で判断して柔軟に対応できず、ひたすら設計どおりに施工することに起因している。

もっとも、日本に技術力がないわけではない。たとえば、三重県にあるトヨタの森では、かなり傾斜であるが、」可能な限り山を切り崩さず、地形を読みながら自然な形で、トラックの通れる広めの基幹道を作っている。ここはもともと昭和40年ころにオーストリアの路網設計の専門家の指導を受けて路網整備を始めたところである。そうした設計思想がある上に、訓練を積んだオペレータがいる。現場の状況に応じ、たとえば岩盤にぶつかりそうになるとそれを迂回する形で開設するなどして、現場で柔軟に対応できることから、このような道作りが可能となる。しかも、こうした技術力があれば、1日あたりかなりの距離の道を作ることができる。だからこそ、設計費もそれほどかからず、開設経費も低く抑えることができる。

以上の通り「林道」は従来生活道も含めて作られてきており、公道に準じた規格になっている。このため、これから日本で必要とされるトラックの通れる林業用に基幹道と、従来の従来の林道を区別するため、林野庁では林業用に基幹道を新たに「林業専用道」という名称で呼ぶことにした。

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