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2017年5月24日 (水)

火祭り公2(その5)

火祭り考2(その5)

「現在、全国さまざまな地域で「火祭り」が行われているが、日本の三大火祭りといえば、通常、玉垂宮の鬼夜(福岡)と野沢の火祭り(長野)と那智の火祭り(和歌山)であろう。」と今回の論考「火祭り行2」の冒頭に書き、これまで、それら三大火祭りについての論考を進めてきたが、その補筆として第5章で「嵯峨釈迦堂の火祭り」を紹介することとしたい。嵯峨釈迦堂の火祭りを日本三大火祭りに挙げる人もいるからだ。

まず、嵯峨釈迦堂の火祭り「お松明」の様子をご覧いただきたい。
https://www.youtube.com/watch?v=wquPOfPowdc

嵯峨釈迦堂というのは、通称の呼び名であって、正式には清涼寺という。

 この寺の歴史には、阿弥陀三尊を本尊とする棲霞寺(せいかじ)と、釈迦如来を本尊とする清凉寺という2つの寺院が関係している。この地には、もともと、嵯峨天皇の皇子・左大臣源融(822年 - 895年)の別荘・栖霞観(せいかかん)があった。源融の一周忌に当たる寛平8年(896年)、融が生前に造立発願して果たせなかった阿弥陀三尊像を子息が造り、これを安置した阿弥陀堂を棲霞寺と号した。その後天慶8年(945年)に、重明親王妃が新堂を建て、等身大の釈迦像を安置した。一説では、「釈迦堂」の名の起こりはこの時であるという。

 棲霞寺草創から数十年後、当時の中国・宋に渡り、五台山(一名、清凉山)を巡礼した奝然(ちょうねん)という東大寺出身の僧がいた。奝然は、三国伝来の釈迦像をこの嵯峨の地に安置することで、南都系の旧仏教の都における中心地としようとしたものと思われる。すなわち、都の西北方にそびえる愛宕山麓の地に拠点となる清凉寺を建立することで、相対する都の東北方に位置する比叡山延暦寺と対抗しようとした、という意図が込められていたとされる。しかし、延暦寺の反対にあい、その願いを達しないまま長和5年(1016年)、奝然は没した。かれの遺志を継いだ弟子の盛算(じょうさん)が棲霞寺の境内に建立したのが、五台山清凉寺である。

嵯峨釈迦堂の「お松明」は涅槃会として行われる。涅槃会(ねはんえ)は、涅槃講や涅槃忌とも称し、陰暦2月15日、釈迦の入滅(にゅうめつ)の日に、日本や中国などで勤修される、釈迦の遺徳追慕と報恩のための法要である。通常、本堂に大きな涅槃図が掲げられる。
嵯峨釈迦堂の涅槃会でも本堂に大きな涅槃図が掲げられる。これは全国各地で行われている涅槃会と全く同じである。しかし、全国各地で行われている涅槃会で、嵯峨釈迦堂の「お松明」のような火祭りをやっているところはどこもない。嵯峨釈迦堂が特殊なのである。

では、なぜ嵯峨釈迦堂だけが「お松明」というような火祭りをやるようになったのだろうか?

嵯峨釈迦堂を建立した盛算(じょうさん)が考えたとして、当時すでに近くに嵯峨薬師堂や福生寺があったので、それらにおける行事に火祭りを思いつく何か要素があったのだろうか? いろいろ調べたが嵯峨薬師堂や福生寺の行事には、何ら「たいまつ」の要素はないのである。

したがって、盛算(じょうさん)が「お松明」という火祭りを思いついた、そのヒントとなるものは、中国での見聞にしかないのではなかろうか。 奝然(ちょうねん)と弟子の盛算(じょうさん)らは、 台州に到着後、 天台山を巡礼したあと、蘇州・楊州などの大都会を経て、宋の首都・開封に到着した。しかし、それらの地方に「たいまつ」を燃やすような祭はなかった。もしあったとしたれ、何らかの形で現在に伝わっているはずであるが、現在、そのような名残はまったく見られない。
彼らは、3年間、中国に滞在し、仏教の四大聖地を巡礼した筈である。中国の仏教の四大聖地とは、 五台山(文殊菩薩)、 峨眉山(普賢菩薩)、 九華山(地蔵菩薩)、 普陀山(観音菩薩)である。そのうち峨眉山は四川省にあり、四川省では、いくつかの都市で、現在、「たいまつ祭」が行われている

奝然(ちょうねん)と弟子の 盛算(じょうさん)らは、中国の滞在期間中に、四川省の峨眉山にも巡礼し、その途中でどこかの都市で「たいまつ祭」を見聞し、 盛算(じょうさん)は、嵯峨釈迦堂を建立したときに、「お松明」を通常の涅槃会に付け加えたのではなかろうか。

私は、 嵯峨釈迦堂の「お松明」の起源は、中国四川省の少数民族の「たいまつ祭」にあると思う

以上のより詳しい内容は、次の論考・ 第5章『嵯峨釈迦堂の「お松明」』 をご覧いただきたい。

http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/hima05.pdf


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