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2016年8月11日 (木)

シャングリラ(その38)

シャングリラ(その38)
第3章 政治改革・当面の課題(その10)
第4節 宗教政策(その1)

チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマの地位はその死後、生まれ変わりとされる子どもがあとを継ぐ慣習がある。

2014年9月26日の定例記者会見で、中国外務省の洪磊報道官は14世の死後、15世を認定する際にもこの慣習が守られるべき、と語った。 過日、インドに亡命中のダライ・ラマ14世は、15世の認定について、自身が90歳になった時点で、チベット高僧と協議し、輪廻転生による継承制度を続けるか判断したい、と語っていた。中国外務相の談話は、この発言をけん制し、15世認定の権限を実質的に中国政府が握っていることを示したものだ。

チベット仏教には、ダライ・ラマに次ぐパンチェン・ラマという高位の称号がある。このパンチェン・ラマも生まれ変わりを探すことで、継承される。

パンチェン・ラマ10世死亡後、ダライ・ラマなどチベット仏教界はゲンドゥン・チューキ・ニマという6歳の少年を11世として認定した。これに対し、チベットの精神的な大きな支柱を支配下に置きたい中国政府は独自にギェンツェン・ノルブという少年をパンチェン・ラマ11世に擁立した。さらに中国政府はダライ・ラマ側のパンチェン・ラマ11世、ゲンドゥン・チューキ・ニマ少年とその家族を拉致し、隔離している。少年らの失踪について、中国政府は当初、関与を否定したが、その後「保護している」と発表。チベットでは少年に対する洗脳が行われているのではないか、と心配されている。

中国政府は、無神論を信奉する共産党の一党独裁ながら、チベットでの転生制度を容認 する立場に転身したのだ。 中国当局は2007年に「チベット仏教の活仏輪廻管理条例」を作り、チベット仏教の後継者選びと最終認定に当局が参加することを明記した。チ ベット仏教への政治介入と批判されるが、最大の眼目はダライ・ラマの後継を中国政府主導で選定することにある。「ダライ・ラマ15世」を親中派の宗教指導者に育成することで、チベットの安定統治を図る考えだ。亡命中のダライ・ラマの発言は、この中国政府の策略を熟知したもので、転生制度の廃止という重大決断を述べたものである。

今後、中国当局とチベット亡命政府の新たな確執を招くことは避けられない。ダライ・ラマ15世についても、同様に、中国政府による「認定」や拉致が行われる可能性は否定できない。

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