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2016年6月11日 (土)

習近平の可能性(その7)

習近平の可能性(その7)
宮本雄二は、『習近平の中国 』(2015年5月、新潮新書)でさらに次のように述べている。すなわち、
『 (中国の環境の悪化は大問題である。)中国の人たちは、環境の悪化と食の安全の悪化に本当に怒っている。(中略) すでに悪化した環境は政府が処置するしかない。国民の目に見える形で改善するためには、膨大な政府支出が必要になる。これも、それを支える税収がないとできない。そして、「強い軍隊」である。そんなものを作って何をするのかは知らないが、この軍事費の増大も、税収が増えないと不可能だ。このように税収は急速に伸ばさなければならないが、それを可能とするのも結局は経済成長である。だから党中央は、何が何でも経済の発展を続けていくしかない。ところが、その経済が大きな曲がり角に来ているのである。
中国はこれまで外国の資本を入れ、技術を導入し、安い労賃を使って安い製品を作り、それを世界市場に輸出して成長してきた。しかしこの成長モデルを続けることはもはやできない。何故ならこの成長モデルのカギは安い労働力にあったからだ。中国の生産年齢人口は11年をピークとして急速に減少しており、それが労賃を押し上げている。それに加え、格差是正のために政策としても労賃を上げる方向で動いている。つまり安い労働力時代の終焉を迎えたのだ。多くの識者が指摘するように中国も「ルイスの転換点」(工業化の過程で農業部門の余剰労働力が底をつくこと)に到達したようだ。(注:だから今後中国は、農村から都市への人口移動、すなわち都市化の進展を進めなければならない。)(中略)
 (現在、中国は、)高賃金に耐えうる労働生産性の高い産業の育成を目指している。産業構造の高度化であり、これが科学技術の振興を図る一つの理由である。また、(中略) 投資と輸出に依存した経済から、消費主導の経済への転換を図らざるを得ない。
 この構造転換は、多くの積極的な意味を持っている。それは先ほど触れた最低賃金の上昇をもたらすし、農村と都市との間の格差是正にもつながる。いわゆる農村、農業、農民がかかえる「三農問題」の解決と結びついているのだ。
(労働生産性の高い産業の育成、消費主導の経済への転換、「三農問題」の解決)これらすべてを含んでいるのが、「経済発展方式の転換」なのである。そして資源配分において市場に「決定的」役割を発揮させようとしている。それが「改革の全面的深化に関する決定」のエキスでもあるのだ。しかも高齢化社会がすぐそこに迫っている。リチャード・クーは「経済発展方式の転換」残された時間は10年ないし15年しかないという。習近平の改革に残された時間もそれだけしかないということだ。(p148~150)(注:「経済発展方式の転換」とはいわゆる「中所得国の罠」から脱することである。 中所得国の罠とは、自国経済が中所得国のレベルで停滞し、先進国(高所得国)入りが中々できない状況をいう。これ は、新興国が低賃金の労働力等を原動力として経済成長し、中所得国の仲間入りを果たした後、自国の人件費の上昇や後発新興国の追い上げ、先進国の先端イノ ベーション(技術力等)の格差などに遭って競争力を失い、経済成長が停滞する現象を指す。リチャード・クーの経済理論は、これを脱し、高所得国になるには10年~15年が勝負どころというものである。)』

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