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2016年6月 1日 (水)

山地拠点都市構想(その158)

山地拠点都市構想(その158)

第6章 山地拠点都市構想の実現に向けて(34)
第5節 山の国民運動(5)
5、知恵のある国家の国民運動(1)

山村の元気再生に対する国民世論の高まりと具体的な支援事業が始まらないと、山は良く ならない。現在、緑の募金活動やさまざまな緑の国民運動が行われているが、私にはどう もピントが外れているように思われる。植林の必要なところがまだない訳ではないが、大 局的に見て、今や植林の時代ではない。禿げ山が問題ではないということだ。今最大の問 題は、切り捨て間伐をなくすことである。また、奥山の改修の問題がある。四手井綱英 が言うように、これからは増えすぎた人工林を少しずつでも天然林に変えていかなければ ならない。 本来の森林とは人工林でなく、択伐後も天然更新でなければならない。植林をしてはならないのだ。 さらに、現在の深刻な問題として源流地域の村落の元気再生の 問題がある。これら三つの問題に眼をつぶって進められている緑の募金活動など現在の緑 の国民運動は根本的に考え直す必要がある。私のいう「山の国民運動」に対比して緑の国民運動と いうのは、前者が源流地域の村落の元気再生にまで視野に入れているのに対して、後者は そういう意識が希薄であって、緑、つまり樹木の植林が中心になっているからである。

(1)緑の国民運動・・・今までの経緯

日本の森林は、戦時中は軍需用材、戦後は建築用材やパルプ用材、さらに薪炭供給のため に乱伐され続け、戦後は各地に禿山が目立っていた。 85年の「国際森林年」には、国土緑化推進委員会が設置した「二十一世紀の森林づくり 委員会」が、二十一世紀の森林管理の方向として「国民参加の森林づくり」の概念を提唱 した。  これは、行政や林業家・森林所有者を中心とした森林管理から、森林の公益的機能の受 益者である幅広い国民の参加を得た森林管理への転換を意図しており、 国民全体で森林 を守り育てていく方向性を明示したものだった。この提言を契機に、国土緑化運動は森林 ボランティア活動の隆盛へと踏み出した。
80年代に入ると、各地で森林ボランティア活動が芽生えたが、その先駆けは60年代に 始まっていた。山火事跡地の再生を目指して67年に岩手県田野畑村で生まれた「思惟の森の会」や富山県大山町で下草刈り作業の軽減のため計画された除草剤の空中散布に反対して、74年に若者を中心に草刈り作業を行った「草刈り十字軍」運動などだ。 90年代後半に入ると、森林ボランティア活動の関連分野の動向により、活動が多角的に 促進され、運動としての広がりをみせるようになった。阪神・淡路大震災(95年)を契機に、ボランティア活動の重要性に対する社会的認識が広がったこと、特定非営利活動促進法施行(98年)による公益活動の担い手としてのNPO・ボランティア活動が定着したことは、大きな影響を与えた。
森林・林業分野でも、95年に「緑の羽根募金」が「緑の募金による森林整備等の促進に 関する法律」として法制化されるとともに、98年から森林ボラン ティア団体を直接の支 援対象とした国庫補助事業が創設された。 なお、「緑の羽根募金」は、国土緑化運動のシンボルとして、戦後の荒廃した国土に緑を復活させる目的で昭和25年に始まったものである。緑の募金運動の基盤強化と活動内容 の多様化を図るため、平成7年に成立された「緑の募金による森林整備等の推進に関する法律」に基づいて、今いろいろな活動が行われている。「緑の羽根募金」の規模は25億円程度で、その半分がおおむね緑化事業に使われている。
さらに2001年に施行された森林・林業基本法には「国民等の自発的な活動の促進」に関す る条項が追加され、「森林ボランティア活動」の明確な位置付けがなされた。
結果として、各地で森林ボランティア団体の設立が相次ぎ、活動テーマも例えば[1] 都市と山村の交流[2]森林バイオマスの利用と連動した森づくり [3]伝統的な木造建 築物など文化遺産の修復用木材の生産を目的とした「木の文化を支える森づくり」・・・ などと多様化し、広がりをみせた。 森林ボランティアは1997年に300団体弱だったが、2006年には1800団体強。10年でほぼ6倍という飛躍的な広がりをみせることとなった。これは、地球温暖化防止や生物多様性保全といった地球規模の環境問題が顕在化する中で、森林の有す る多面的機能 が改めて注目されたことが大きいといえる。

最近は、下流域の都市が上流域に「市民の森」を設定して、下流域住民が参加した森林保 全活動を進めるなど、市町村主導による流域一体となった活動も各地で生まれつつある。 さらに産官学民の多様なセクターが「国民参加の森林づくり」に参画する機運が高まりつ つあり、知恵のある国民運動として、源流地域の村落の活性化まで視野に入れた「山の国民運動」が展開されることが期待される。私が「山」というとき、山村を含む山のことで ある。



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