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2015年7月24日 (金)

「野生の思考」について

「野生の思考」について

私の論文『日本的精神と中村雄二郎の「リズム論」』の 第2章第3節『「リズム論に基づく生活」について 』の「2」において詳しく説明したが、その要点は、次のとおりである。すなわち、

『 形而上学的にいえば、二度の革命的 変化があるという。第一次が一神教の成立がもたらした宗教によって思考のしかたが変り、思考能力がある程度セーブされた。自由奔放な流動的知性というものが、これを中沢新一はレヴィ・ストロースに敬意を表して「野生の思考」と呼んでいる。』

『 「野性の思考」は日常的な生活を支配し、「宗教的思考」は非日常的生活を支配していた。それらの違いははっきりしているが、違いを認めつつ思考は流動的である。それは、山口昌男のいう「両義性の論理」に通底するものがあるのであるが、中沢新一はそれを「対称性社会の知恵」だと呼んでいる。』

また、私は「新たな勉強」という論考の『 1、淮南子(えなんじ)の思想について』で、「 金谷治の書いた「淮南子(えなんじ)の思想・・・老荘的世界」(1992年2月、講談社)を読んで私がいちばん強く思うのは、老荘思想のような物凄い思想が何故あのような「辺境の地」に誕生したかということである。それは、私の思うに、グノーシスの力による。」と述べ、「グノーシス」の説明にリンクを張ったが、「グノーシス」をひと言で言えば、「辺境の地」において「文明」と「野蛮」の統合が起こるが、その統合された思考が「野生の思考」である。
グノーシスについて:http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/gunousisuni.pdf

以上をさらに要約すれば、「野生の思考」とは、宗教によって思考能力がある程度セーブされる以前の自由奔放な流動的知性であるし、また「グノーシス」によって統合された思考ということになるが、これでは「野生の思考」を判りやすくかつ正確に説明したとは言い難いように思う。そこで、私は、今ここで、「野生の思考」とは「宮沢賢治の思考のようなもの」と理解する事にする。

中沢新一はその著書「ミクロコスモス1」(2007年4月、四季社)において、「宮沢賢治は理想の農場をつくり、そこを人間と動物、人間と自然のあいだに生み出されるべき通底路をつくりたかったのだと思います。」と言っているが、そのような農場とは、「宇宙との一体感を直感する」、そのことが可能な「場」としての農場だと私は思う。宇宙との一体感とは、動物や自然との一体感のことである。
さらに、 中沢新一はその著書「ミクロコスモス1」(2007年4月、四季社)において、『 トーテミズムの体系は、人間と自然とのあいだに失われた永遠の関係を回復することによって、宇宙のなかの人間の位置について、全体を直観する知性をあたえようとしてきたのである。「野生の思考」という本(レヴィ・ストロース)には、このようなトーテミズムの世界の豊かさが、たぐいまれな思考力と文章力によって、みごとに表現されている。』と述べているが、私たちのおなじみの人でいえば、宮沢賢治こそ「野生の思考」を身につけた人であったと思う。多くの方は、宮沢賢治といえば、どういう人であるかをイメージできるし、「宮沢賢治の思考のようなもの」といえば、どのような思考かをイメージでできる。

以上が、「野生の思考」とは「宮沢賢治の思考のようなもの」と理解する所以である。草野心平の思考もおなじようなものである。
草野心平:http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/tubukusano.pdf

なお、 中沢新一はその著書「ミクロコスモス1」(2007年4月、四季社)において、『 チベットの先生は、「あなたは過去の生において、カンガルーというあの奇妙なオーストラリアの動物だったことがあります。』と言ったことを紹介した上で、『ぼくはオーストラリアの砂漠に住むカンガルーで、夜明けから日没まであきもせず目の前にあるあの赤い山を見つづけていた』と述べているが、チベットの先生も中沢新一も「野生の思考」の身についた人であったのであろう。
「あの赤い山」について:http://www.kuniomi.gr.jp/geki/ai/gejinken.html

こういう「野生の思考」についての哲学的説明としては、田邊元の「種の論理」がある。
http://www.kuniomi.gr.jp/togen/iwai/syuron3.html

私は、今後多くの人によって「野生の思考」に関係のある思想や哲学が書かれることを大いに期待しながら、論文「日本的精神と中村雄二郎のリズム論」の第2章第3節の「4」に、「野生の思考」と関係のある思想や哲学をピックアップしておいたので、「野生の思考」については、上述の新たな説明の他にそれらも参考にしていただければありがたい。

日本的精神と中村雄二郎のリズム論:http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/rizu.pdf

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