« 山地拠点都市構想(その5 再掲) | トップページ | 市町村の財政健全化に向けて »

2015年3月10日 (火)

熊のことは熊に訊け(その14ヒグマの嗅覚)

熊のことは熊に訊け(その14ヒグマの嗅覚)

食に絡んだヒグマの身体的特徴の一つ特筆すべきところがある。彼らの嗅覚だ。味覚と嗅覚はかなり関連性の強い感覚なので、食いしん坊なヒグマはこの嗅覚を最大限に利用して暮らしている。シートン(注:米国の博物学者、作家。英国生れ。1866年―1879年カナダの森林地で生活、のちカナダ、英国で学ぶ。 1898年 発刊の「私が知っている野生動物」が有名。)の時代から脳の解剖によってヒグマの嗅覚中枢が発達している事は判っていたが、現在では、ヒグマの嗅覚はイヌの4〜5倍敏感とされている。生ゴミやシカ死骸なら、ヒグマは数キロメートル先から匂いを追って嗅ぎ当てる事ができる。我々ヒトが視覚を使ってものを見るのと同様、ヒグマは「嗅覚を使っていろいろを見ている」と表現できるだろう。それで、ヒトが視覚に頼りがちなように、ヒグマは匂いに最も敏感に反応する。突出した嗅覚に対してヒグマの視覚は弱く、聴覚に関して私はよく分からない。ただ、あるテストで、静寂の中85m先の一眼レフの連写音を聞き取れる事が判明し、それなりに優秀と表現できる範囲だと思う。
ヒグマは、はじめて経験する匂いには、若グマでなくとも必ず反応する。その反応の多くは、鋭い嗅覚で匂いを追って接近しそれが何かを確かめる行動だが、その時の警戒心は、ヒグマの年齢、あるいは経験・性格によって、やはりいろいろだ。用心深く人知れず行う個体もあれば、フラフラ近づいて無邪気に立ち上がって呑気に漂う匂いを嗅ぐ若グマなどもある。
とにもかくにも匂いの元までやってきたヒグマは、次に、その匂いといろいろな事象を関連づける。実際は、周辺のさまざまな要素があるので複雑だが、無理して単純化して言うと、それが「美味しく、危険もない」と学習すれば、次回からは、その匂いは誘引要素としてヒグマに働くようになる。逆に、「危険である」と学習すれば、忌避心理を抱くようになる。そして、「美味しくもなく、面白くもなく、危なくもない」と学習すると、その後、その匂いには反応しなくなる。
過去において、土葬の習慣があるエリアではヒグマが墓を暴いたりする例があった。1mやそこら掘って家畜の死骸や生ゴミを土の中に埋めて投棄しても、ヒグマに対してはほとんど効果がない。ヒグマは、腐敗時に発生するメタンガスとそれらの食糧を関連づけて学習していて、地中内で発生するガスはその圧力で土を通って地上に漏れ出るので、匂いでその場所を正確に嗅ぎ当てる事ができるのだ。実験した事はないが、その種のガスをボンベに入れて持ち歩き、ヒグマと遭遇したときに風上でボンベのバルブを開けると、恐らく、ヒグマは過剰に反応するだろう。
ところで、山塊に存在するヒグマ同士がどの程度自分以外のヒグマを認知しているかだが、かなりの精度でお互いを把握し合っていると思う。ヒグマは、近隣に侵入しているヒトの存在を、通常はほぼ確実に察知している。山間に住んでいるヒトのありようも、時に興味を持って見て聞いて嗅いでいるに違いない。私はきわめて鈍感なヒトの五感を補うべく多少の道具と観察と分析を駆使してヒグを特定し、例えばある沢沿いにようやく4頭のヒグマを把握するが、その4頭のヒグマ同士は、恐らく彼らの嗅覚のみで、まるで手に取るように他の3頭を把握しているだろう。オス成獣、若グマ、親子連れなど、それぞれのヒグマは自分の能力を踏まえて上で、各々の持つ最も適した戦略で絶妙な行動圏・活動圏、そしてもしかしたら一種のテリトリー的空間を形成しているように思われる。

« 山地拠点都市構想(その5 再掲) | トップページ | 市町村の財政健全化に向けて »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1117507/59218262

この記事へのトラックバック一覧です: 熊のことは熊に訊け(その14ヒグマの嗅覚):

« 山地拠点都市構想(その5 再掲) | トップページ | 市町村の財政健全化に向けて »