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2015年2月 6日 (金)

熊のことは熊に訊け(その10ヒグマの食物②)

熊のことは熊に訊け(その10ヒグマの食物②)

岩井基樹は、著書「 熊のことは熊に訊け」( 2010年、つり人社)の中で以下のように述べている。

ヒグマが各季節、各環境でどんなものを食べているかを調べるには、おおむね三つの方法がある。まず、食痕(しょっこん=食べ跡)から調べる方法。次に、ヒグマの糞から調べる方法。三つ目は、実際にヒグマの現物を観察し、何を食べているかを確認する方法。

私は、その三つの方法を使いながら、「食いしん坊なヒグマ」にふさわしく、食を中心に私の調査エリアの一年を作ってみた。次の表である。

http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/nensyuuki.pdf



この表は、湧別川水系・北大雪山塊の調査から得たデータをもとにしているが、知床、道南の一部など特殊なエリアを除き、おおむね北海道のヒグマの年周期だと思っていいだろう。
ただし、ヒグマの個性が食に強く現れる要素もあるため、すべてのヒグマがこの表に従う訳ではなく、また、同じ北海道でも気候・植生あるいはヒトの暮らし方など、地域性によってばらつきがある。
例えば、本州同様ブナ林の広がる道南・渡島半島(おしまはんとう)ではブナの実の豊凶がヒグマの行動に影響し、カラフトマスの遡上が順調に行われるオホーツク海側のエリアでは、やはりその年のカラフトマスの遡上量や時期が無視できない。その年々の、特にシーズン前半の気候の変動にもヒグマのいろいろな同行がファジーに連動するだろう。また、農業の作物種によっても、ヒグマ用の防除フェンスの普及率によっても、ヒグマの行動パターンは変わる。
この表はあくまでもスタンダードである。

このヒグマの活動年周期表をつくった狙いについて、岩井基樹は「熊ことは熊に訊け」の中で次のように述べている。

私にとっての食物云々は、生態形状のヒグマを知りたいからというよりは、自分が追う一頭一頭の心理や動きを読むための材料としてある。私のヒグマ観察・ヒグマ研究のルーツは、アラスカの原野での生存のためのリスクマネージメント。ヒグマが闊歩する森で暮らし、活動するための安全確保。現在のスタンスもあくまでその延長線上にある。つまり、「どうやったらクマと悶着を起こさずにヒトが山や森を楽しめるか」あるいは「ヒトとヒグマが軋轢をどう解消しながら北海道という島に暮らせるか」というものであって、それに影響の乏しい細かいことはあまり頓着しない。当初は、ヒグマの食物を詳細に調べ、まるでコレクションを集めるように羅列して書き記したが、その羅列は今や遠い過去の博物館のようなたたずまいを見せている。今は、その博物館から選りすぐった特別なヒグマの食物に注目して、この動物のいろいろを捉えようとしている。

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