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2014年12月26日 (金)

熊のことは熊に訊け(その4ヒグマの本質)

熊のことは熊に訊け(その4ヒグマの本質)

私などは、吉村昭の小説「羆嵐」などを読んで、ヒグマはモンスターのように恐ろしい野生動物だというイメージを持っていた。しかし、岩井基樹はそうではないという。岩井基樹も、昔は、私と同じようなイメージを持っていたようだが、北海道で詳しくヒグマを観察しているうちに、そういうイメージは錯覚だと気がついたのだそうだ。「熊のことは熊に訊け」(岩井基樹、2010年、つり人社)において、彼はいう。「確かに、ヒグマは外見、山での走破性、知恵と力、威圧感、そしていざというときの破壊力などは、モンスターの素質十分である。(中略)ヒグマという動物は、シカやキツネのようにたびたびヒトの前に姿を現すわけでなく、ヒトの側がよほど意識し注意深く活動していないと、そうそう目にできる動物ではない。臆病で警戒心が強く孤立性の高い動物なのだ。特にヒトという動物は野生界からするとかなり異質な存在なので、その不気味なヒトと接触・悶着・軋轢を起こしたがらない。それだけ対応能力を持った動物ということもできる。」彼はこのように言い、次のように述べている。

100頭に1頭か1000頭に1頭か、パーセンテージはよくわからないが非常に低い確率で、特に異常性・危険性を持ったヒグマが出来上がることが確かにある。そのほとんどは人為的要因で、残りのほんのわずかは遺伝的かもしれない。北海道には、そういうクマが出来上がる人為的な素地もいまだあちこちに転がっている。しかし、その環境で問題を起こして派手にマスメディアを駆け回る異常なクマをもってクマの像をつくろうとするのでは、いつまでたってもヒグマの実像はつかめない。(中略)
北海道でも、いろいろな自然に対してシンボルとなるものが道庁によって指定されている。北海道の樹としてはエゾマツ、花はハマナス、鳥ではタンチョウ。(中略)じつは、以前、北海道の動物としてシンボリックな野生動物を定めようと道庁が動き、ヒグマが候補に挙がった。ところが、「害獣をシンボルとするとはどういうことか!」と特に農業関係のヒモのついた議員から攻撃に遭い、北海道の動物という指定作業自体が頓挫して、そのまま現在に至っているらしい。
2009年8月、札幌の北大でヒグマのシンポジュームが行われたが、このサブタイトルが「ヒグマは北海道のシンボルになれるか?」というものだった。恐らく50年前なら、「いかにして恐怖の猛獣ヒグマを殺すか」「どうやって我々の北海道から害獣ヒグマを駆逐するか」という野蛮なものしか成立しなっただろう。しかし、時代は確実に変わりつつある。一般市民に広く開かれたこのシンポジュームは、全道から300名近い来場者で熱気を帯び、ヒグマへの関心とともに、どうやって北海道で長年暮らしてきたこの強力な野生動物と折り合いをつけれるのか、共生思想のもと意識が広がり始めているのをひしひしと感じた。

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