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2014年12月 6日 (土)

山地拠点都市構想(その53)

山地拠点都市構想(その53)
第3章 知恵のある国家とは?
第1節 「奥」の思想
3、 片岡 智子の「奥の思想」

哲学では、宇宙全体(マクロコスモス)の一部でありながら全体と類似したものを小宇宙(ミクロコスモス)ということが多い。人間や芸術作品などである。それに対し、片岡智子は、「奥」 という言葉があらわすただならない空間をインターコスモスと呼び、『日本はこのマクロでもミクロでもない「奥」(=心の奥、空間の奥)という空間に、聖なるものを発見し、文化を築いてきたと言えよう。』と言っている。その代表的なものが、彼女は社叢(しゃそう)と言っているが、神社の構造に見られるという。そして、彼女は、「このような社叢こそが日本文化を読み解く鍵ではないだろうか」と言っているので、以下、彼女の論考を紹介しておこう。

片岡智子は次のように言っている。すなわち、
『「社叢」とは、「社」が建築物に代表されるように人の手になるものを表わし、「叢」が森や草木すなわち自然を表すと考えられる。日本人は、単なる自然崇拝ではなく、自然に手を加えて土地を整え、社を作り、そこに神を祀ってきた。言い換えれば、社叢はアニミズムを文明化したもので、これこそ日本文化の特徴をなすものだといえる。では、そのインターコスモスを表現する「社叢文学」はどこに見出されるのだろうか。
『古事記』に、「倭は くにの真秀ろば(まほろば) たたなづく青垣 山籠れる(やまごもれる) 倭し麗し」という歌謡がみられ、これが言葉として捉え得る最古の社叢文だと思われる。この歌謡は死に瀕した倭建命が詠んだ国偲び歌で、『古事記』においては今の鈴鹿山脈あたりから大和の国を眺めた景色を詠んだものとなり、従来、「畳のように重なり合って垣根のようになった青々と茂る山に守られた大和は本当に美しい」と解釈されている。だが、実際に奈良へ行ってみると、この解釈には今ひとつ納得しがたいものが感じられる。また、『日本書紀』には景行天皇が九州で望郷の歌として詠んだ同様の国偲び歌として登場する。
この二つの歌の共通点は、いずれも遠隔地から鳥瞰的に望んで大和を歌ったものとして捉えられていることである。これらはマクロな見方で解釈されたものだといえよう。これらの歌謡は早くに上田正昭氏が『古事記』、『日本書紀』にあるように名だたる人が詠んだものではなく、民間の歌謡だったといわれているように、この歌謡は独立歌謡として捉えられるべきであり、そこからインターな見方が浮かび上がってくる。以上のように本歌謡は、本来インターな視点で読み解かれなければならない。そのように考えると「やまと」は「ヤマのトコロ」という意味で、「くに」は天や空に対する「土地」を表す言葉と解される。従って、「くにのまほろば」は土地の一番秀でたところということになる。次の「たたなずく」であるが、まず、「たた」は接頭語で「たたずむ」などと同じ「たた」であり、「なずく」は別の歌謡に「なづき田」とあるように馴れる、従うの意味であり、木々が繁り、静かに親和してたたずんでいる様子を謡ったものと思われる。次に「青垣」であるが、これは漢語ではなく和製の訓読された熟語で、垣をなす緑の木々を讃えるために創られた言葉だと考えられる。青々とした木々によって何かを隔ててそこを守るための「垣」と表現し、その聖性を帯びた山のこもったところがヤマトであり、麗しいと讃えているのである。考えてみれば「青垣」の「青」は自然を、「垣」は人工のものをあらわしており、これは正に社叢の詩語に他ならないといえよう。最後の「うるわし」であるが、これは端麗という意味であるが、語源は大野晋氏が指摘されたように「潤う」の「うる」と同じであり、みずみずしさを重要視する日本の美的感覚を端的に現す和語だといわれている。
したがってここでのヤマトは青垣に囲まれた山籠れる奥処であり、そこは清水の潤う麗しい所だと謡っているのである。近年、纒向遺跡で水の祀り場が発見されたが、これが三輪山の麓であることを考え合わせると、ここが「大和」の発祥地ではなかろうか。大和を国名としたのも、そこに山があって、その清水が湧き出るところを象徴するものだったからであろう。ここには王権が成立する以前から、麗しい山が存在しており、古代人は聖なるものと仰ぎ見ていたにちがいない。それを言葉で表現し水祭りの歌としたのが、この歌謡だったのではないか。これこそ社叢文学の源というべきであろう。このように社叢というインターな命に根ざした世界を取り戻し、そうした眼差しで見ていくと、日本文化の、あるいは日本文学の根源的な諸相が解明できるであろう。』・・・と。


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