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2014年9月17日 (水)

霊魂の哲学と科学(その63)

霊魂の哲学と科学(その63)
第8章 「神」はどこに存在するのか?(3)

第2節 エゾイタチの神(1)

神話というのは世界各国にあり、神話の世界は実に広くさまざまなものがある。アイヌの神話もさまざまなものがある。神話から何を学び取るべきかについては、神話の奥が深すぎて学問的な定説というものはない。しかし、私はアイヌの神話から二つの神話を取り上げ、これからの文明を考える際の重要な視点を明らかにしてみたい。この節では「エゾイタチの神」(松谷みよ子「日本の伝説<下>」昭和50年7月、講談社)を取り上げたい。そこでは「神というものは人間あっての存在である」と語られているが、本当か? 
つまり、皆さんに問いかけたい問題は「 人間あっての神というのは、科学的に本当か?」ということである。

まず「エゾイタチの神」という神話のあらすじを紹介しよう。
天に「エゾイタチの神」がいて人間の世界(地上)を見守っている。「エゾイタチの神」が刺繍(ししゅう)の手仕事に夢中になってちょっと地上から目を離している隙(すき)に、地上が飢饉となる。「イナウ(木幣)の神」が村のかしらが供えたわずかな酒を携えて「エゾイタチの神」に「飢饉が終わったときに、さまざまな御馳走を差し上げますのでどうかお助けください!」という村のかしらのお願いを伝える。

イナウというのは、木製の祭具のひとつで、本州のいわゆる「削り花」とよく似ている。北海道(アイヌ社会)では一般にミズキやヤナギ、キハダなどを用い、病気払いや魔除けにはタラノキ、センなどの刺のある木、エンジュやニワトコなどの臭気のある木も使われたらしい。イナウの機能としては、神への捧げ物となる、神へ伝言を伝える、清めを行う、それ自体が神となる、などいくつかのものに分かれるが、「エゾイタチの神」という神話に登場するイナウは、村のかしらの伝言が「エゾイタチの神」に届くように供えられた。イナウは、祭壇や囲炉裏の中などに供えられるが、祭主がイナウにお神酒を捧げな
がら祈り言葉を述べると、イナウを介して祈り言葉が神へ届くと考えられている。イナウは神が最も喜ぶ捧げ物だが、神自らは作れないことになっていて、神は人間からイナウをたくさんもらうことで神の国で地位を高めるものと考えられていた。つまり、神は人間から数多く祈られれば祈られるほど「神としての大きな力」を発揮することができると考えられていたのである。この祭祀で重要なのはお神酒である。お神酒を捧げなければならない。神さまも酒が好きらしく。天上の神々はその酒で酒宴を開くのである。今回は飢饉であるので山の幸海の幸は捧げられていないが、飢饉が終われば捧げるという誓いのもと、
お神酒だけが捧げられた。それで村のかしらの気持ちは天の神々に伝わるのである。
 「エゾイタチの神」はさっそく天上の神々を招いて、イナウの神が届けてきたお神酒に
よって酒宴を開く。そして神々に村のかしらの口上を伝えるのである。

 酒宴の場でシカの神とサカナの神は、最近の人間はシカやサカナを取る時の作法がなってないことを言い,人間を懲らしめているのだという。そこで「エゾイタチの神」は言うのである。
 『シカの神よ、サカナの神よ、お話は、よくわかりました。お怒りは、もっとものことです。けれど、もう一度、おもいなおしてくださいませ。飢饉が、あんまりひどすぎると、人間もまた、死に絶えましょう。そうなれば、誰がわたくしたちに、かぐわしい酒や、飾りのついた木幣や、おいしい食べ物をそなえるでしょう。人あっての神であり、神あっての人であれば、助けあい、教えあって暮らしたいもの。どうか許してやって下さい。鹿を下界へ、さかなを下界へ、どうか、降ろしてやってください。』・・・と。

この神話にはその他いろいろな場面があってそれぞれ詩的に美しく語られているが、この神話のハイライトはこの「エゾイタチの神」の発する「言葉」である。最終的な結論だけ言うと、「エゾイタチの神」のこの「言葉」に神々は感動し、もとの豊かな大地が無事取り戻された。そのあと、「エゾイタチの神」は村のかしらに、夢の中で、けものを殺す作法、さかなを殺す作法を教えた。村のかしらは、それを人々に伝えたから、それからは鹿はうつくしい飾り矢をくわえ、さかなは、うつくしい飾り棒をくわえ、はねまわりながら天へ帰ってくるようになった。「めでたし!めでたし!」・・・という訳だ。

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