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2014年7月 6日 (日)

医心方(その16)

医心方(その16)

第1章 中国伝来文化と医心方

第3節 明日香と医心方(3)

2、盟神探湯に使われた火傷の治療薬・猪膏(ぴんいん)

盟神探湯(くがたち)については、 前之園亮一の論説「宋書南斉書・名代・猪膏から見た氏姓成立と盟神探湯」(2003年3月、学習院史学の黛弘道先生退任記念号)によれば、火傷の治療薬として猪膏(ぴんいん)が大量に用意されたらしい。前之園亮一は、『 湯による火傷の治療には2週間以上もかかるので、盟神探湯の裁判を受ける被判者一人一人に相当の量の猪膏(ぴんいん)が必要である上に、盟神探湯裁判では氏姓を争う双方の氏族が集団で争うので、一回の盟神探湯で何十人、何百人という火傷の患者が発生し、その治療に膨大な猪膏(ぴんいん)を必要としただろう。』・・・と言っている。また、彼は、阿知王の一族によって、後年医心方に書かれたようないくつもの治療法が適宜適切に使われたことを示唆している。允恭(いんぎょう)天皇の行った盟神探湯(くがたち)は、神事のみならず、火傷の治療にも阿知王の一族が重要な役を担ったのである。

「医心方」には、猪膏(ぴんいん)の用途が多数記載されている。なかでも盟神探湯(くがたち)との関連で興味をそそられるのは、火傷の薬としての用途である。「医心方」に見える猪膏(ぴんいん)を用いた火傷の治療法を槙佐知子の訳に従って列挙すると、次の通りである。

火傷がすでにできものになった患者の治療法(「葛氏方」)・・・猪膏(ぴんいん)と米の粉を練り合わせ、一日に五、六回、塗ること。

湯火による火傷が爛れた場合の治療法(「極要方」)・・・猪膏(ぴんいん)で柳白皮を煎じて患部に塗ること。

火による火傷の治療法(「千金法」)・・・丹参(たんじん)を多少にかかわらず羊の脂で煎じて患部に塗ると、あらたかな効き目がある。羊の脂がない場合には猪膏(ぴんいん)を用いよ。死んだ鼠一匹を猪膏(ぴんいん)で煎じて、すっかり溶けてしまってから患部に塗ると治り、あとが全く残らない。

火による火傷で爛れた瘡(かさ)を治して、そのあとに毛髪を生やし伸ばす処方(「耆婆方」)・・・柏樹白皮を用意して粉末にし、猪脂に混ぜて塗布すると良い。また、それを煎じて、その煮汁で患部を洗うこと。

火による火傷の瘡や灸による治療法(「蒯繁方」)・・・柏樹白皮五両、甘草一両、竹葉三両、生地黄五両。四種類のすべてを綿に包み、苦酒(す)五合にひたして一晩漬けておく。これを猪膏(ぴんいん)一升で煎じて竹の葉が黄ばんだら火からおろし、滓を除いて患部に塗り付けること。




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