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2014年7月 9日 (水)

医心方(その19)

医心方(その19)

第1章 中国伝来文化と医心方

第4節 医心方とは?(3)

2、医心方と民間療法(1)
医心方(いしんぼう)とは平安時代の宮中医官である鍼博士丹波康頼撰による日本現存最古の医学書である。 中国にも現存しない二百以上の文献から撰集したもので、文献学からも非常に貴重なものである。
全30巻、医師の倫理・医学総論・各種疾患に対する療法・保健衛生・養生法・医療技医学思想・房中術などから構成される。27巻分は12世紀の平安時代に、1巻は鎌倉時代に書写され、2巻と1冊は江戸時代の後補である。本文はすべて漢文で書かれており、唐代に存在した膨大な医学書を引用してあり、現在では地上から失われた多くの佚書を、この医心方から復元することができることから、文献学上非常に重要な書物とされる。漢方医学のみならず、平安・鎌倉時代の送りカナ・ヲコト点がついているため、国語学史・書道史上からも重要視されている。東アジア(特に漢字文化圏)における所謂「古典」というものの扱いは、新しい書物を為す場合の引用源として使用される。つまり、新しい書物は、古い書群から本文を抜き出してきて、編み直したものであるわけである。
鍼灸医学の書は、明清に至るまで、その殆どが内経などの編み直しと言ってもよい。つまり、由来のわからない文を為すことを忌むのが、東アジアにおける古典の扱いであった。医心方は、この点で非常に優等生的な書と言える。
医心方は、撰者丹波康頼により984年(永観2年)朝廷に献上された。これは宮中に納められていたが、1554年に至り正親町天皇により典薬頭半井(なからい)家に下賜された。また丹波家においても秘蔵されていたとされるが、これは少なくとも丹波家の末裔である多紀家(半井家と並ぶ江戸幕府の最高医官)においては、幕末までに多くが失われていたとされ、多紀元堅が復元し刷らせている。幕末に、江戸幕府が多紀に校勘させた「医心方」の元本には、半井家に伝わっていたものが使用された。この半井本は、1982年同家より文化庁に買い上げがあり、1984年国宝となっている。現在は東京国立博物館が所蔵している。
槇佐知子により『全訳精解 医心方』(筑摩書房、全30巻。巻一・巻二・巻二十五は、2分冊刊)が1993年から刊行開始された。 槇佐知子の『全訳精解 医心方』は、東洋医学の源流を照らす画期的業績で、今では、専門家の間でなくてはならない文献となっている。しかし、私たち一般人にはそれを読むことは金銭的にも内容的にも難しい。しかし、槇 佐知子は、『食べものは医薬 「医心方」にみる四千年の知恵』(同上)をはじめ、多くの関連書籍を刊行しているので、私たち一般人もそれらを読んで大変勉強になる。その内、私は、「王朝医学のこころ・・国宝<医心方>に学んで」(2005年3月、四季社)」と「改訂版・病から古代を解く・・大同類聚方探索」(2000年6月、新泉社)と「今昔物語と医術と呪術」(1993年4月、築地書館)と「自然に医力あり」(1997年2月、筑摩書房)の四冊によって、医心方の勉強をした。以下において、槇 佐知子の四冊の著書と言えば、この四冊を指している。このことを予めお断りしておく。




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