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2014年6月10日 (火)

明日香と阿知王(その6)

明日香と阿知王(その6)

3、医心方と民間療法(2)

それでは、 槇佐知子の『全訳精解 医心方』 の内容を以下に紹介しておこう。

巻一A・B 医学概論篇Ⅰ・Ⅱ

巻二A 鍼灸篇Ⅰ
紀元前から唐代までの鍼灸書から撰出した当巻は『医心方』30巻中唯一鍼博士康頼の自序がある入魂の巻。孔穴名や壮数、禁鍼・禁灸のツボや为治の対象が現代とは微妙に異なる。タイムカプセル『医心方』に、進化を続ける現代鍼灸をかさねた温故知新の書である。

巻二B 鍼灸篇Ⅱ
来診者の徒歩・乗り物の種類に応じた待ち時間、感情の起伏や消化時間と鍼灸の是非、男女・年齢・体質による鍼灸の工夫、灸の点火法の貴重なデータ等の実用例から鳩摩羅什が医書を訳した証明まで。陰陽道、天文、易と鍼灸、九九の歴史に新たな資料となる記述があり各分野必見の書。

巻三 風病篇
本来、風病は病名ではなく病因を指し、中風は邪風による損傷、癩は邪風による皮膚の異常だった。インドの原始仏教や道教、神道、密教、陰陽道とのかかわり、祭祀や習俗の原点がみえ各分野の研究に新たな視座を与える。

巻四 美容篇
髪に関するさまざまな悩みや美肌への願望は昔も今も同じ。洗髪剤、養毛剤、毛生え薬、白髪対策。シミ・ソバカス、イボ・ウオノメ、ナマズ肌、ワキガの治療法。現代人も驚く美肌パック。魏や隋の後宮の秘方等々『長恨歌』や『源氏物語』を読む上でも参考になる。

巻五 耳鼻咽喉眼歯篇
蓄膿症・血膜炎・虫歯など七十一章に渡って耳鼻科・眼科・歯科に関わる当時の理論や治療法を載せる

巻六 五臓六腑気脈骨皮篇
胸・心・脇・腹・腰・腎・肝・脾・肺・大腸・小腸・胃・胆・三焦・膀胱・筋・骨・髄・肉・皮・脈・気病など、症状のある部位別に分類。現代に生きる湯薬、丸薬、薬酒のルーツや僧の治療法が目立つ。

巻七 性病・諸痔・寄生虫篇
男性の性器にかかわる諸病と痔疾、寄生虫症の理論と治療法を収める。痔には仏典からの抄録もある。今昔物語に登場する寸白の正体と治療法など古典や衛
生史の研究資料としても貴重な巻である。

巻八 脚病篇
脚気・中風・リューマチから瘭疽・アカギレまで。現代の脚気と同定されていた古方の脚気は、『枕草子』の「あしのけ」に該当する手足の病状の総称であった。唐代を代表する医学者でもある鑑真の処方も含み、書誌学的にも重要な巻。

巻九 咳嗽篇
今日の医学では咳はカゼの徴候だが、古代中国医学では風病と咳は全く別なものと考えられていた。風病は巻三にあるが、巻九は咳嗽や喘息のほか、呼吸器、胃病、シャックリなどが十八章におさめられている。本書には咳の薬として現代でも著名な処方が見られる。

巻十 積聚・疝瘕・水腫篇
種々の結石による激痛のほか、心筋梗塞、潰瘍、穿孔、浮腫、腹水、胃炎、肝炎、黄疸さらに癌を含む重篤な病症や条虫、住血吸虫、回虫など寄生虫症に関する理論と約二百の治療法(温熨法・灸法・洗滌薬・塗布薬・内服薬・薬酒)が、千年のタイムカプセル、国宝「医心方」から初めて蘇る。

巻十一 痢病篇
これまで暑気あたりや日射病とされてきた霍乱(カクラン)はどんな病気だったのか。疫病も含む下痢を便の色や症状で分類し、薬方やツボを発見した古代人。現代の処方や灸の源流や生活史の資料などもぎっしり。

巻十二 泌尿器科篇
口渇を伴う多尿と尿閉、錬金術の石薬の副作用による類似症状など、従来の消渇の定説を覆えす理論のほか、泌尿器系の諸症、大小便の便秘と失禁、血尿、血便、下血、結石などについての諸説とユニークな治療法を収める。

巻十三 虚労篇

巻十四 蘇生・傷寒篇
古典に登場する蘇生法や薬法には、現代の習俗や年中行事にかかわるものもある。王朝人を脅かしたもののけは、中国からの外来思想であった。傷寒では著名な張仲景の説は載せず、他の多くの文献の学説や治療法を紹介、従来の傷寒=チフス説が覆える。

巻十五 癰疽篇 悪性腫瘍・壊疽
古代の癰疽(悪性腫瘍・壊疽)には、現代病といわれる糖尿病、癌、結核、性病など重篤な病気が含まれている可能性がある。その原因がストレスや食生活のほか錬金術による薬(水銀・砒素)の服用にあると指摘し、状況に応じた治療薬、方法を呈示。現代医学の基本をここに見る。

巻十六 腫瘤篇
生命にかかわる根の深い疔や、口中のできもの。結核性の瘰癧がつぶれて瘻管
となったものや、潰瘍、瘤、さまざまなできもの、腫れもの等々の治療法を四十一文献から転載している。

巻十七 皮膚病篇
現代医療でも治療困難な皮膚病と、古代人は如何に戦ってきたか。0.3ミリのヒゼンダニの存在を裸眼で確認したり、洗浴、瀉血、排膿、切断、灸、罨法、塗布薬、内服薬など工夫をこらした。現代医療に通じるものや『ヨブ記』の灰治療に共通するもの、梅毒の定説を覆す記述等々を満載。

巻十八 外傷篇
湯火によるヤケド、打ち身、くじき、骨折、毒虫・毒蛇や獣による咬傷、狂犬に咬まれたときなど、古代の人々は、どのような知恵で手当てをしてきたのだろうか。

巻十九 服石篇Ⅰ
古代中国の道教の人々は金石玉丹で製薬した。いわゆる錬金術で草薬より薬害が劇しく、誤れば死を招く。そのため超人的な修行をした者にだけ製法が伝えられた。本書には服石の禁忌と薬害の治療法や唐招提寺の開祖鑑真の秘方がある。




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