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2014年5月22日 (木)

御霊信仰の歴史的考察(その11)

御霊信仰の歴史的考察(その11)

第4節 御霊信仰の本質(1)

どうも宇宙の原理というものは両義性を持ったものの生成と統合にあるらしい。私はそんな予感を持ちながら、自然の原理と社会の原理を考えながら、「御霊信仰哲学に向けて」というこの論文を書き始めているが、社会の原理も両義性を持った出来事の「習合」にある。

「はじめに」で申し上げたように、靖国問題に関わる「御霊信仰」の問題については、御霊信仰の歴史的考察をした上で、宗教哲学の赴(おもむ)きを見届けないといけないし、その中で、梅原猛の人類哲学ならびに日蓮の立正安国論と関係して法華経をどう理解するかという問題も出てくるが、さらには、祈りと呪力に関する科学的な説明をどうするかという難問に突き当たらざるをえない。これら一連の問題を考える場合に大事なのは、どうやら宇宙の原理に対する基本的な認識であるらしい。御霊信仰の歴史的考察を行う場合にも、社会の原理に対する基本的な認識をどう持つかが基本的に大事であって、両義性を持った出来事の・・・「習合」という社会的現象の認識の仕方が重要であるらしい。


御霊信仰の歴史的考察については、義江彰夫の著書「神仏習合」(1996年7月、岩波書店)が基本的な教科書としてもっとも良い。その他にも参考にすべき著作もいろいろあるが、私は、まず義江彰夫の言っていることを紹介し、私なりの考察をしてみたい。義江彰夫は、その著「神仏習合」の中で次のような趣旨のことを言っている。すなわち、

『 奈良末・平安初頭以降になると、これら王権反逆者の怨霊が、社会底辺を含む広範な人々によって祀られるようになった。怨みの心を慰め鎮めながら、同時にそれをかき立て、盛り上げるかのような法会が盛んに行われるようになったのである。この際この法会を営んだ人々は、怨霊を敬意の念を込めて怨霊と呼んだ。これが御霊会と呼ばれるもので、ここから怨霊信仰は政治的社会運動の様相を帯びるようになってくる。』

『 神泉苑で行われた御霊会は、朝廷主催の大規模かつ典型的な御霊会であるが、規模は小さいながらも類似の御霊会は、京・畿内から始まって全国各地に広がってゆく中で、次第に整えられ、定型的な民間行事というべきものにまで成長していった。』

『 京・畿内から始まって全国各地に広がっていった御霊会は、王権膝元で政争敗死者の遺族や、王権路線から排除・抑圧された貴族たちが、王権を相対化する密教僧たちと連携して、その怨念を社会に潜在する王権支配への不満と結びつけ、反王権社会運動を画策していたことを予想させる。その際、疫病死などの蔓延を御霊を祀らないことからくる災いと喧伝したのは、そうすることで、御霊の悲劇に直接共鳴する王権の被害者はもちろん、疫病や死を怖れる人々一般を広範に組織できたからであり、また彼らに御霊の悲劇と王権の残虐さを知らせることができたからと考えられる。また、そうすることで王権の直接的弾圧をかわすという狙いもあっただろう。』

『 では、このように京・畿内から全国に広がっていった御霊会では、祭りはどのように行われていたのだろうか。「日本三代実録」の語るところは、極めて具体的である。まず、御霊たちを仏と見立てて、その前で経を説くと記している。之は、仏教の経典を聞かせることで、無実の罪で敗死した者たちを鎮魂して、仏の世界、とりわけ成仏しきれない密教の神々となったことを確認し、彼らを死に追いやった王権の罪を示唆する法会として御霊会が催されたことを端的に示している。次いで、歌舞・馳射・相撲以下の多様な行事がある。御霊の苦しみを慰めるとともに、そこに結集した多様な身分の人々の日頃の憂さを晴らし、御霊の怨念を盛り上げ、参会者一同がそれに共鳴してゆく効果をもっただろう。このように見れば、御霊会の震源は敗死者遺族や共鳴する没落貴族にあったとしても、これを社会内の王権への不満と結びつけ、そのような独特な法会に仕立てる役割を担ったのは、崇道天皇信仰以来の敗死者遺族らの心情に呼応してきた密教僧であったといえよう。』

『 御霊信仰は、外在的すなわち王権のもたらす圧迫に、在来の神祇を超える次元、すなわち密教の世界から掣肘(せいちゅう)を加えるという次元、つまり密教が朝廷に干渉して朝廷や神祇官の自由な行動を妨げるという・・・宇宙的な次元での手立てであったことが見えてこよう。御霊会とは、神身離脱・神宮寺と裏表の関係でこの時代に生まれてきた神仏習合の一形態に他ならないのである。』・・・と。


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