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2014年3月26日 (水)

浄蔵(7)

浄蔵(7)

「マンガ浄蔵」は、マンガとは言え、上田勝俊が並々ならぬ思いを持って書いたものであり、素晴らしい書籍である。金峯山で浄蔵が髑髏から独鈷杵(どっこしょ)を授かる伝承をよく調べられたと思うし、その意味するところを判りやすくしかも的確に描いておられる。ここではセリフだけ紹介しておこう。上田勝俊は、次のように書いている。すなわち、

『 あるとき浄蔵は・・・、葛城山で日々修行に励んでいた。ある夜のこと・・・、修行で疲れた身体を岩屋に横たえた。うとうとしていると・・・、「浄蔵!浄蔵!」「あっ!」「浄蔵助けてくれ!わしをすくってくれ・・・。」「そなたは誰だ・・・」「わしはお前だ・・・。金剛山にいる。動くことができないのだ。救ってくれ・・・。頼むぞ!」「あっ!」「ふ~、夢か・・・」「だが妙に気になる」「夜が明けたら金剛山に行ってみるか。」・・・金剛山山中・・・・。「浄蔵!浄蔵!」「この声は昨夜の・・・」「うっ!頭がヅッキンヅッキン痛む!」「い・・・痛い!いったいどうしたのだ」・・・よろよろ、くらぐら・・・よろけて崖から落ちる・・・・「わ~っ!」『う~ん!」・・・上を見上げ・・・「あんな高いところから落ちたのか・・・。よくも生きていたものだ。」「・・・これも天のご加護か・・・」「ん・・っ!尻の下に何かある」「わっ!!これは人の骸(むくろ)だ!」「おやっ・・・この骸(むくろ)、手に独鈷(どっこ)を握っている。」「・・・ということは、この骸は僧侶かあるいは修験者・・・」「・・・・」・・・浄蔵はポロポロと涙を出す・・・・「いったいどうしたのだ」「この骸を見ていたら妙にせつなくなって涙が溢れてきた」「何やらわたくしに縁(えん)があるような予感がする」「この骸が生前何者のであったか調べてみよう。」・・・浄蔵は骸の前に座ると印を結び、金剛蔵王権現に陀羅尼(だらに)を唱え始めた・・・「オンバサラクシャアランジャ」「ウンソワカ・・・」「アランジャウンソワカ」「オンバサラクシャ・・・」『オンバサラクシャ」「オンバサラクシャ・・・」「オンアジャラソワカ」「オンソワカ」「オンバサラクシャ」「おおっ!」『浄蔵!よくきてくれた。長い間待ち続けたぞ・・・」「あ~っ!あなたは葛城山の岩屋でわたしの前に現れた方ですね。いったいあなたはどなたです?」「わしはお前だよ!」「えっ!あなたがわたし・・・。するとわたしは誰でしょう?」「わからぬか・・・。これがお前の昔の姿だ。「えっ!」「では・・、わたしはあなたの生まれ変わりだと・・・」「うむ・・・」「岩屋でわたしに救ってくれと言っていたのは、あれはどういう意味なんです?」「知っての通り人は皆この世にそれぞれ役目を持って生まれてくる。わしの役目は修験道を極め、世の人々を救済することだった。」「わしは自分の役割を全うするため、この金剛山で修行に励んでおった・・・」「修行の最中突然の頭痛に見舞われた。そして崖から落ちて、落命したのだ。」「役割を果たすこともなく・・・」「・・・あなたが命を落として果たせなかった役割を全うするためにわたしがこの世に生を受けたのですね・・・」「その通りだ。与えられた役割は全うしなければならない。」「なぜならそれぞれが自分の役割を果たしてこそ、この世の中がうまく回ってゆく。どれひとつ欠けてもこの世は微妙に狂いが生じてくるのだ・・・」「かくいうわたしも何代目かの生まれ変わりなのだ。」「そうなのですね・・・。やっと得心しました。」「先ほど突然頭痛に襲われたのも・・・、同じ魂を持っていたから・・・。」「そうだ・・・」「・・・お前の新しい魂にわずかに残っていた古い記憶が甦ったのだ。だからお前とこうして再会することができたのだ。」「だが間もなく古い記憶もわしも消える。わしが消えたなら加持にて骸の手の中のこの独鈷(どっこ)を受け取ってくれ。」「独鈷を・・・」「わしはこの独鈷を渡すためにこの寂しい谷底でお前と出会う時を待っていたのだ。」「そして今日ようやく会うことができた・・・」・・・浄蔵、感激の面持ち・・・「長かったが独鈷を渡せばこの世でのわしの役目も終わる。これで晴れて成仏できる。」「あっ!」「浄蔵とは頼むぞ。無事に役割を全うしてくれ。「あ・・・あ、あ~、消えた・・・」「・・・浄蔵!何をしている。加持にてわが手の中の独鈷を受け取ってくれ!」「ウンソワカ・・アランジャ」「オンソワカ」「オンアランジャソワカ」「オンバクラクシャ・・・」「ウンソワカ」「アランジャ」「オンバサラクシャ」「確かに独鈷は受け取りました」・・・そして、次の日、骸を丁重に葬り、経をあげた浄蔵は・・・、自らの役割を果たすことを強く決意すると、再び修行の場へ戻っていったのである。終わり!』・・・と。

「マンガ浄蔵」は、マンガとは言え、上田勝俊が並々ならぬ思いを持って書いたものであり、素晴らしい書籍である。金峯山で浄蔵が髑髏から独鈷杵(どっこしょ)を授かる伝承をよく調べられたと思う。その上田勝俊が浄蔵の人物像について簡潔明瞭に欠いているのでそれを紹介しておきたい。彼は次のように書いている。すなわち、

『 祇園祭で、先導する長刀鉾に連なる中に山伏山という鉾がある。山伏山は、山伏姿の人形を飾る珍しい鉾だ。この山伏の人形は浄蔵が金峰山や大峰山に入り修行をしている姿と伝わっている。浄蔵は大徳とも呼ばれ当時世に聞こえた天台宗の僧侶である。京都東山の法観寺に建つ塔を八坂の塔と京都人は親しみをもって呼んでいる。平安時代前期、この八坂の塔の傾きを天皇の依頼で祈って直したという話の主人公であり、堀川通りの一条に架かる橋の名を一条戻り橋と呼ばれてきているのもこの浄蔵の事績によるものである。さまざまな霊験が数多く語り継がれてきているが、特に注目すべき点はかの菅原道真が藤原時平の讒言により大宰府に左遷された事件にもおおいに関係がある。北野天神縁起絵巻には菅原道真が大宰府に配流される様子を始めとし、雷神となった菅原道真が冤罪を恨み当時の殿上人を震撼せしめた紫宸殿の落雷事件を巻中に盛り上げて描かれている。この絵の中で刀を振りかざして雷神を雷神を退散せしめる公家の姿が見えるのだが、この人物こそ道真を左遷に陥れた張本人である藤原時平である。時は流れ、左遷事件に深く係わった人々は道真の怨みをかって次々と死亡させられていったが、時平にも死の影が忍び寄る。ある日、病の床に伏す時平は懇意にしている文章博士の三善清行を枕元に呼び息子である浄蔵に病を治す加持祈祷を頼む。
絵巻には病の床に伏す藤原時平の前で祈る浄蔵の姿がある。病身時平の両の耳穴からは二匹の青い蛇が現れており、青い蛇に化身した道真の霊が三善清行に語るには、あなたの息子浄蔵が祈祷するために私の願いが成就しない。願わくば浄蔵の祈祷を直ちにやめさせよ。かくして三善清行と浄蔵は、菅原道真の意を理解して静かにその場を立ち去ると、藤原時平は間もなく死亡したと伝えられている。その後も浄蔵は、貴人の病を祈祷で治すことなど数々の霊験を顕した。』


以上のとおり、天台密教の僧侶・浄蔵は偉大な人物であり、朝廷にとってなくてはならない人であったのである。特に将門の乱のときは天皇を中心とする朝廷は歴史上最大に危機に陥るのだが、それを救ったのは浄蔵である。そのことについて、私は詳しく書いたので、是非、次をじっくりご覧戴きたい。

http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/masakado.pdf

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