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2014年2月23日 (日)

正義の偽装(その18第1章第3節8−2)

佐伯啓思の「正義の偽装」その18
第1章 自由主義と民主主義について
第3節 これからの日本の政治・・・民主主義について考える
8、 ポピュリズムのゆくえ・・・対話と地域コミュニティ(2)

 ところで、人びとが幸せにイキイキと生きていくには、何よりも政治が大事だと考え、そのために哲学の大系を作り上げた人はプラトンである。その後偉大な哲学者が出てはいるが、すべてプラトン哲学の部分的な脚注だと言われている。私は今の日本の政治を ポピュリズム(大衆主義) であると肯定的に捉えながら、その「ゆくえ」を心配している。今上述したように、民主主義の原点が草の根民主主義にあるとすれば、民主主義がどうなるか、 ポピュリズム(大衆主義)がどうなるか、そのゆくえはひとえに地域コミュニティが今後どうなっていくかにかかっている。
プラトンの考えからいえば、まず政治家が問題提起をし、それをもとにさまざまな対話が起こるのであって、対話の原点には政治家がいる。したがって、政治家たるものは、地域の人々の幸せのために欠かすことのできない問題についてはそのための政策を発信しなければならない。私は第1章第6節で、『政治家は、企業がそうであるのと同じように、良い政治商品を一般大衆に提供していけば良いのである。それがポピュリズムの本質だ。』と申し上げたが、市場経済下におけるポピュリズムが成功するかどうかは政治家の質にかかっている。政治家は天下国家の事も考えねばならないし地域コミュニティの事も考えねばならないが、何よりも大事なのはプラトンがいうように「哲学」である。プラトン以降政治を語った哲学者は見受けられない。政治を語った偉大な哲学者はプラトンをおいてほかにないのである。かかる観点から、「ポピュリズムのゆくえ」を探る上でプラトン哲学が不可欠と考え、この本ではプラトンを中心として思索を重ねてきた。プラトン哲学の心髄はエロス論であると思う。では、プラトンのエロス論がどのように「ポピュリズムのゆくえ」と関係してくるのか?
 地域コミュニティというものは、必ずマイノリティがでてくる。これは避けられない。地域コミュニティはマジョリティの住み良い地域社会のことであり、そこからはじき出されたのがマイノリティであるから、地域コミュニティの問題を考える際には、マジョリティとマイノリティがともにイキイキと生きていけるような社会構造というものが問題となる。したがって、政治家と住民はともにこの問題を考えて対話を重ねていかなければならない。
  私たちは身体を生きているが、それはとりもなおさず「エロスの原理」によって生きていることに他ならない。主体がすべての対象と向き合うとき、その対象が女性であれ男性であれ、自然であれ、神であれ、すべての場合、「エロスの原理」が作用する。このことは上述したとおりである。だとすれば、マジョリティとマイノリティがともにイキイキと生きていくための原理として「エロスの原理」は考えられなければならない。「エロスの原理」のもとづく社会構造とはどのようなものか? そこが問題である。「エロスの原理」を考えないと「理想的な地域コミュニティ」は作れないというのが私の基本的な考えである。
 私は、これから人びとがイキイキとした生活をしていく上で、地域の人々に求められる知性として「エロス」が基本的に大事であると思う。「エロスの原理」は、差異を認めた上でそれを乗り越える原理である。愛、善、慈悲を生じせしめるものは「エロスの原理」である。愛、善、慈悲は、自分自身が「対象」に働きかけてはじめて、「自分と対象との響き合い」が起こり、その現象の中で生成される。まず「対象」を見つけてそれに向かっていかなければならない。そういう志向性の中に愛、善、慈悲は生成される。

地域コミュニティにおける対話は民主主義の原点である。ポートランドがその模範だが、数多くのNPOがあり、政治家と住民の対話が大変うまくいっているので、地域コミュニティがうまく機能していれば住民はイキイキと生活ができる。
http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/eros14.pdf

ポートランドは参考にすべき点は多いと思う。しかし、理想をいえばその他にも考えねばならない事がある。 現実には難しくとも、 理想的な地域コミュニティを作るために私たちは努力をしなければならないのである。私が考える努力の方向は、三つある。ひとつは「地域通貨」である。二つ目はマイノリティを支援するNPOが地域コミュニティに多数あることであり、三つ目は、「エロスの神」が地域コミュニティ或いは域外に多数存在することである。まずはこれらのことについては、別途書いたので、是非それをご覧頂きたい。
「地域通貨」:http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/youyaku1.html
「マイノリティを支援するNPO」:http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/youyaku2.html
『「エロスの神」を祈ろう!』:http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/youyaku3.html

これらは、「理想のコミュニティ」を作り、ポピュリズムをより進化させるための必要条件だと考えているからである。そして、「理想のコミュニティ」を作るということは、実は、現在世界的に蔓延しているニヒリズムから脱却する唯一の道であり、国全体がイキイキと社会経済活動をしていく上で欠くことのできない問題である。
「ニヒリズムと地域コミュニティ」の問題については、是非次をご覧頂きたい。
http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/youyaku4.html

先に述べたように、近代社会では、多くの人が場所や大地から切り離され、地に足のつかない「根なし草」となって価値観を喪失し社会をふらふらと浮遊しだすのである。人々は 地域のコミュニティなど伝統的コミュニティから切り離され、宗教や地域社会、或は企業や政党といったものを媒介にしては、ひとはもう結びつかないのであ る。 ニヒリズムから脱却する、すなわちイキイキした社会を作るには、私は、故郷(ふるさと)における地域社会を基本として、さまざまなコミュニティを育て、 都市とのさまざまなコミュニケーションを高め、都市とのさまざまなネットワークを作っていくことが肝要である。
そのために政治家が果たすべき役割は大きく、地域の人々と政治家の対話がきわめて重要である。かかる観点から、 次に、「政治家の対話」についてプラトンの考えを紹介したい。
http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/youyaku5.html


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