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2014年1月12日 (日)

四天王寺(その3ディオニュソス)

知られざる四天王寺

その3 アポロンとディオニュソス

 プラトンは、エロスの神について形而上学的思考を重ねた哲学者で有名であるが、彼は、知識の源としての「バクティ」と官能的な「マニア」とを区別した。「バクティ」とは、サンスクリット語で、「献身」「信愛」「信仰」「神への愛」「帰依」を意味する言葉であり、「マニア」とは、マニアの語源はギリシャ語で「狂気」のことであり、自身の趣味の対象において、周囲の目をも気にしないようなところもある事から、「~狂(きょう)」と訳され、ほぼ同義のものとされている。
 さらに、 プラトンは、 官能的な「マニア」を、酩酊と陶酔のダンスを伴う「マニア」と性愛に結びつくエロチックな「マニア」に分けて考えた。前者の 酩酊と陶酔のダンスを伴う「マニア」は、ディオニュソスとより直接的なつながりを持つと見なした。
 プラトンもニーチェもディオニュソス的なものに強いあこがれを持っていたということは、ヨーロッパにありながら、アジア的なものを理解する感性を持っていたということであり、そのような哲学者は歴史上二人以外には見当たらない。二人はまさに超人的な大哲学者であるが、実は、二人が知り得たディオニュソスの神は、もっともヨーロッパ的な神・アポロンの影響を受けてかなり変身していたのだ。もともとディオニュソスは、アジアの影響によって誕生したのであり、「ディオニュソス」を深く理解するためには、その源流をさかのぼって「シヴァ」を知らねばならない。
 ニーチェは超人的な哲学者だ。プラトンを完全に理解し得たのは彼ぐらいではないか。ニーチェは、「生の哲学」を考えており、人間の生の何たるかについて形而上学的思考を重ねた結果、アポロン的価値とディオニュソス的価値の統合を重視する。どちらに遍してもいけないのだ。合理と非合理の二元論的認識を排して、その統一を図らなければならない。矛盾を乗り越えなければならないのである。ニーチェはディオニュソスの狂乱的祭りを重視している。キリスト教はこれを排斥するので、そんな神は殺してしまえと言っているのだ。
 幸い、「シヴァとディオニュソス・・・自然とエロスの宗教」(著者・アラン・ダニエル、訳者・浅野卓也と小野智司、2008年5月、講談社)という格好の本があるので、私たちは今、「ディオニュソス」の源流を知ることができる。 シヴァとディオニュソスは、厳密にいうと、少し異なる部分がある。 酩酊と陶酔のダンスを伴う「マニア」に関してはまったく同じ。しかし、 性愛に結びつくエロチックな「マニア」については、シヴァは元型そのまま、ディオニュソスはアポロンの影響を受けてかなりマイルドになっている。そのようにお考えいただきたい。

さて、思想において、アポロン的とかディオニュソス的とかいうことがある。もともとアポロン的とかディオニュソス的とかいうことは、ニーチェが「悲劇の誕生」で説いた芸術衝動の一つであるが、現在、芸術作品のみならず、文芸作品全般にいわれている言葉である。アポロン的というのは、主動的傾向をもち、静的で秩序や調和ある統一を目ざすさま。合理的である。ディオニュソス的というのは、受動的傾向を持ち、動的、ハチャメチャ的、陶酔的、創造的、激情的などの特徴をもつさま。非合理である。
私は、「両頭截断」という禅の言葉を使うことが多いが、この「両頭截断」というのは、お互い矛盾するものを論理的には統合できないので、座禅を組んだり難行苦行を重ねて直観力を身につけて、認識するという認識のしかたを言っている。互いに矛盾する信仰を統合した実態というものが歴史的には存在するが、そういう実態を言い表す言葉に「シンクレティズム」という言葉がある。シンクレティズムとは、全く異なる、あるいは正反対な信仰を統合する実践である。すなわち、シンクレティズムは、異なる宗教が混合してひとつの統合された宗教となることで、混淆(こんこう)とか習合(しゅうごう)という言葉が使われている。例えば、日本の神仏習合、仏教と道教の習合(修験道の場合)、シヴァ教と仏教の習合(ヒンズー教の場合)などがある。しかし、こういう実態があるからと言って、これを論理的に説明するのは、まあ不可能に近い訳で、哲学で何とか説明しようというのが「パラドックス論理」なのである。
学問の分野でも、今西錦司が言っているように、論理的なアプローチだけでなく、ひらめき、すなわち直観の働く場合が少なくなく、アポロン的なものとディオニュソス的なものとが両方とも大事なようだ。
中沢新一は、四天王寺の本質は、アポロン的なものとディオニュソス的なものとの両方があり、それらが統合されたところにある、と言っているのだ。




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