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2013年12月24日 (火)

龍神と龍の口神泉苑

龍神と龍の口神泉苑

龍神は、竜宮城の王であり、奈良の猿沢の池、琵琶湖の竹生島などに出没しているが、竜宮伝説のある所に必ずしも龍神が いるわけではない。竜宮伝説の起源は中国であり、竜宮には龍王すなわち龍神がいる。しかし、日本に伝来してからは、浦島太郎と乙姫に焦点の合った民話に変 身してしまって、龍神の登場しない民話が多い。龍神は、信仰と深く繋がっているので、私は、竜宮伝説より龍神伝説の方に重大な関心を持っている。宗教的な 話しとしては、龍の口、神泉苑の龍神が歴史的にもっとも大きな影響を与えた。
「日本の道教遺跡を歩く」(福永光司、千田稔、高橋徹共著、2003年10月、朝日新聞社)では、 神泉苑がそこに造られた理由を清らかな水が湧いていたことに求めているが、そんな単純なものではない。
平 安京は、龍神の働きによって、永きに渡って繁栄が約束された都である。まあいうなれば、龍の都である。したがって、風水思想によって、龍穴に皇居、大極殿 が造られた。風水思想によれば、もし龍穴の近くに龍の口があれば、この上ない理想的な都となる。神泉苑は正に龍の口でもあったのである。
龍の口といえば、猿沢の池が、芥川竜之介の短編小説にもあるように、有名であるが、神泉苑がむしろ歴史的には重要である。その歴史的な意義を話す前に、不思議な龍神の話を紹介したい。

http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/ryuuhusi.pdf



さて、神泉苑の龍の口が果たした歴史的な意義について、話をする時が来た。御霊信仰の話である。

「いかみの怨霊」と「早良親王の怨霊」と「淳仁天皇の怨霊」を天皇にまつわる怨霊が怨霊の代表例であるが,その他にも平安の頃に非業の死を遂げた皇族は多い。
人々は天変地異の勃発や疫病の流行などを怨霊のたたりによるものと考え,それら怨霊を祀り(まつり)だした。御霊会(ごりょうえ)という神事の発生である。
資 料に初めて見えるのは,863年に平安京の神泉苑で執行されたものである。かの有名な京都の祇園祭もその本質はあくまでも御霊信仰にあり,本来の名称は梢 園御霊会(ぎおんごりょうえ)であって,八坂神社の社伝では869年に天下に悪疫が流行したので人々は祭神の牛頭天王(ごずてんのう)の祟りとみてこれを 恐れ,同年、全国の国数に応じた66本の鉾を立てて祭りを行い,神輿(みこし)を神泉苑に入れて御霊会を営んだのが起りであるという。
さて、かの有名な安倍晴明は,平安時代の偉大な陰陽師である。陰陽道そのものは奈良時代に確立された宮中の専門組織であるが,庶民相手の民間陰陽道がなかった訳ではない。否,むしろ民間陰陽道は民衆を巻き込んで大きなブームを作っていったのである。民
間 陰陽師が全国を回りながら,方角や暦の吉凶,占い,加持祈祷をして人々のハートをキャッチしていったらしい。平安時代の妙見信仰や室町時代の七福神信仰や 江戸時代の庚申信仰などはその流れであるという。 こっくりさん、方位や家相判断、九星占い、姓名判断などもその系譜らしいし、また大本教や金光教などの 新興宗教も民間陰陽道の流れを汲むものと言われている。 逆に,宮廷陰陽道は、空海によって密教が誕生すると、その勢いに押されて次第に衰退していったよ うである。
密教の僧・道賢の力によって、菅原道真の怨霊をのりきった朝廷は、積極的に御霊会(ごりょうえ)を主催していく。祇園御霊会である。い うまでもなくそれが今の祇園祭に繋がっていく。今宮御霊会や船岡山御霊会などが誕生するたびに、密教はこれを抱き込み統合することに成功する。都では、怨 霊は人々の不満を 糾合する神となった。怨霊が守護神に変身したのである。「ひっくり返し」が起っている。朝廷における暗殺や理不尽な配流もなくなった。そして祭りの誕生 だ。実にいい。何という知恵か。すばらしい。

このように、御霊信仰は素晴らしい日本人の発明だと思うが、 御霊会(ごりょうえ)という神事が、日本で最初に行なわれたのが神泉苑だということは十分認識していて欲しい。
なお、怨霊信仰については、私の電子書籍「怨霊と祈り」に詳しく書いたので、是非、読んでもらいたい。
http://honto.jp/ebook/pd_25231956.html

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