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2013年8月15日 (木)

シヴァ教と老子

シヴァ教と老子

ハイデガーが言うには、「エートス・アントロポイ・ダイモーン」という言葉をヘラクレイトスが使っている。これはギリシャ人の思考を非常にうまく表現しているという。「エートス」親しくあるもの、「アントロポイ」は人間、「ダイモーン」はギリシャの神々である。だから、「人間にとって親しくある場所は神の近くにいることである」という意味だとハイデガーは言っている。政治家は「ニヒリズム」の問題とは真正面から向き合わなければならないのであって、ハイデガーがいう「故郷喪失」の現実を直視してほしい。民主主義の原点である「地域コミュニティ」がなくなっているのである。この状態を放置したままでは、日本の元気再生は望むべくもない。政治家に期待するところ大である。

シヴァ教は、自然を生きることを人生の目標としている。自然を生きるとは、ただ単に自然の中に生きるのではなく、自分自身も自然の一部であることを自覚して、自然の原理、老子の言い方で言えば、道、つまり宇宙の実在というか天の指し示すところに従い生きる、そういう生き方をいう。
すなわち、シヴァ教の目標とする生き方は、正に老子の理想とする生き方と同じである。したがって、私は,老子の哲学の源流にシヴァ教があると思う。
「シヴァとディオニュソス・・・自然とエロスの宗教」(著者・アラン・ダニエル、訳者・浅野卓也と小野智司、2008年5月、講談社)という名著があり、その中で アラン・ダニエル は次のように言っている。すなわち、

『 シヴァ教は本質的に自然宗教である。ディオニュソス同様、シヴァは、天界における神聖なヒエラルキーの諸相のなかの一点を表象し、このヒエラルキーは地上の生の総体に関わる。霊妙なる存在と有限の命をもつ生き物とのあいだに現実的な同盟関係を打ち立てることで、シヴァ教はつねに都市社会の人間中心主義に対抗してきた。シヴァ教の西洋的な形態としてのディオニュソス教もまた、人間が野生の世界、山や森の獣との交感状態にある段階を表彰するものである。
 シヴァと同様、ディオニュソスは植物の神、樹木とブドウの神である。また動物の神、とりわけ牡牛の神である。この神はわれわれ人類に、聖なる法をふたたびみいだすよう教え、人間の法を捨て去るよう諭(さと)すのである。魂と肉体の力の解放をめざすディオニュソス崇拝は、都市型宗教から激しい弾圧を受け、既存の社会に属さないアウトサイダーたちの異形の守護神として描かれてきた。(中略)しかしながら、シヴァ神の神秘的な呪力をまったく無視することはできなかった。都市を治める人びとに敵視されたにもかかわらず、シヴァ=ディオニュソス崇拝にはつねに一定の役割が与えられてきたといえよう。』
『 極東の宗教について言えば、道教へのシヴァ教の影響は明白なもので、またジャイナ教の合理主義が儒教に甚大な影響を及ぼしてはいるが、本書で論ずることはしない。後に仏教を介して、ジャイナ教とシヴァ教の影響は再び中国、東南アジア、チベットでマハーヤーナ・タントリズムという形態で現れるが、それはシヴァ教とジャイナ教のある種の融合体に他ならないことだけ述べておこう。インドのタントラ文書は、「中国の儀礼」の存在についても頻繁に言及している。』・・・と。

では、老子の哲学を理解する一助として、かって私がシヴァ教について書いたものをここに紹介しておきたい。
http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/nietye03.pdf

http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/nietye08.pdf

これらは私の電子書籍「さまよえるニーチェの亡霊」の中の第23章と第8章であるので、全体の脈絡を知るには是非次を読んでいただきたい。
今、日本もそうだが、世界は「人間が生きる最高の価値観」を失ってニヒリズムに陥っている。そのニヒリズムから脱却して私たち人間が生き生きと生きていくためには、何をなすべきか? それを一言で言えば、ニーチェの考えを中心としてハイデガーやホワイトヘッドらの哲学のいいところ取りをして、ニーチェの哲学を超えた新しい哲学の方向を見定めて、具体的な運動を展開することだ。そうしないと狂い死にしたニーチェの亡霊は浮かばれまい。「エートス・アントロポイ・ダイモーン」
http://honto.jp/ebook/pd_25249963.html

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