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2013年8月11日 (日)

日本の「歴史と伝統・文化」の心髄

 

 私は、奈良時代(ならじだい)は日本の骨格ができた極めて画期的な時代であったと考えている。

 奈良時代とは、710年(和銅3)に元明天皇が平城京に都を移してから、794年(延暦13年)に桓武天皇によって平安京に都が移されるまでの約80年間をいうが、この8世紀の初めに、国号を倭から「日本」と改めたと中国史書にみえる。

 この遷都には藤原不比等が活動したが、律令国家制度についてもその完成は藤原不比等の手になるといってもいい。奈良時代の前・飛鳥時代の「飛鳥浄御原令」「大宝律令」が、日本国内の実情に合うように多方面から検討され、試行錯誤の結果、遂に藤原不比等の手によって律令国家という天皇中心の中央集権国家が完成したのである。

 

 藤原不比等の目指した律令国家は、いうまでもなく中臣神道が精神的支柱であり、天皇中心の中央集権国家とはいうものの、藤原一族の絶大な権力を作り上げるものでもあったのである。藤原一族の横暴は長屋王の変にその極に達したのかも知れないが、そこが日本の歴史のおもしろいところで、河合隼雄のいう「ゆり戻しの現象」が始まる。主役は、聖武天皇と良弁のコンビである。二人とも藤原であって藤原でない。そこが実におもしろい。そして、さらにおもしろいというか、不思議にさえ思えるのは、その良弁が明恵に繋がっているという点である。明恵も藤原であって藤原でない。

 私は、日本の「歴史と伝統・文化」の心髄は、その「ゆり戻し現象」だと考えている。日本の「歴史と伝統・文化」の心髄は、山口昌男のいう「両義性社会」と言っても良いし(参考1参考2参考3)・・・・、中沢新一のいう「対称性社会」と言っても良いかもしれない。私は、私流に・・・「違いを認める文化」とか「両頭截断 と言っているのだが、この場面では、「ゆり戻し現象」と言った方が判り良い。藤原不比等の手によって律令国家という天皇中心の中央集権国家がまさに完成し た・・・その時に、聖武天皇と良弁のコンビによって、「ゆり戻し現象」が起こって、わが国は「両義性社会」というか「対称性社会」が維持されるのである。 藤原不比等が、紀記を背景につくり挙げた「中臣神道」に対抗して「東大寺の仏教」が誕生する。

 先に触れたように、東大寺は不思議な寺院である。寺院としての性格は、明らかに律令仏教であるが、山林仏教としての性格もすでに色濃く帯びているのだが、その点はこれからゆっくり説明するとして、ここでは靖国問題に関連して、日本の「歴史と伝統・文化」の心髄というものを意識していただければそれで良い。

 日本の「歴史と伝統・文化」の心髄は何かと河合隼雄に聞いたら、河合隼雄は「心髄がないのが心髄だ」と言っていたが、私は、上記のように考えている。日 本の「歴史と伝統・文化」の心髄は、大事な時にきっちり「ゆり戻し現象」が働くことである。わが国は、ヨーロッパやアメリカのような非対称な社会ではない のである。この際、ヨーロッパやアメリカという国については、中国やロシアも含めて先進諸国といいかえてもいいかも知れないが、わが国は「非対称な社会」 ではないのである。

 

 わが国では、大事な時にきっちり「ゆり戻し現象」が働くのである。明治から終戦までの軍国主義に対して、今は、その「ゆり戻し現象」として平和主 義が定着している。今もっとも大事なことは、憲法改正である。わが国の自主憲法を創ることだ。しかし、それは、現在の平和憲法を下敷きに・・・最小限の修 正を施すだけでいいのではないか。大事なことは、日本の「歴史と伝統・文化」の心髄というものを意識して、明治とははっきり決別することだ。靖国問題についても、表面的な議論だけでなく、日本の「歴史と伝統・文化」の心髄というものをはっきりさせて・・・もっともっと奥深い議論をしなければならないのではないか。

 明恵は、わが国の生んだ・・・歴史上最高の思想家である。自然の叡智を兼ね備えた明恵の智恵「あるべきようは」を学ばなければならない。そうすれば、靖国問題の解決や明治という時代の総括も、自ずと応えが出てくるはずである。私のもっとも言いたいことはこのことだ。

 

 靖国問題を考える場合も、日本の歴史と文化に照らしてそのあり方を考えねばならない。日本的精神に反する靖国神社であってはならない。しかし、残念ながら、現在の靖国神社は日本的精神に反する存在である。

 

 

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