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2012年10月12日 (金)

私の電子書籍「女性礼賛」第2章

第二章 胎児の世界

 女性の身体は不思議が一杯ある。月の満ち欠けに応じて生理が生じるのも不思議だし、「祈りの科学」シリーズで述べた胎児が「天空の音楽」を聴いているというのも不思議だ。しかし、私が今ここで言いたいことはそんなことではない。私が言いたいのはそんなことではなく、妊娠直後の実に驚くべきことが母親の腹の中で起っている、そのことだ。では、以下においてその摩訶不思議なことの説明をしたい。
 まず、お腹の胎児の成長過程を説明する。

 妊娠初期の一週目までは、まだ着床していない。二~三週でやっと着床し、胎芽(たいが)が形成される。この胎芽の時期における形はタツノオトシゴのようだといわれる。体重は約一グラム、身長約一センチメートルである。母体すなわち子宮の大きさは変わらない。鶏卵くらいの大きさぐらいだといわれる。二ヶ月めに入ると、まだ胎芽の時期だが、胎盤が出来始め母体との繋がりがしっかりしてくる。頭と胴体の区別ができ、手足目鼻口や、内臓、脳などが作り始められる。七週の終わりで体重約四グラム、身長約二・五センチメートル。子宮はガチョウの卵ほどになる。

 三ヶ月目からが胎児期に入る。内臓、中枢神経の発達が盛ん。肝臓が出来、排泄を行う。外性器が形作られ、男女の区別ができ、三等身になってくる。へその緒が長くなり、胎児は羊水の中で動き始める。体重約二十グラム、身長約八センチメートル。子宮は握りこぶし大になるが、お腹はまだ目立たない。四ヶ月目からは、胎盤が完成、内蔵がほぼ完成し、活発に動く。人間らしい体になり、手足が少しずつ動き始める。超音波ドプラー法で心音が聞ける。超音波診断法で男女の区別がつく。頭部はピンポン玉くらい。重約百二十グラム、身長約十七センチメートルぐらい。子宮は新生児の頭程度の大きさになる。基礎体温が低温期に入る。妊娠中期(五ヶ月目)になると、髪の毛、うぶ毛、爪が生える。心臓の動きが活発になり、神経、骨、筋肉などの発達が進む。胎児の頭は、鶏卵ほどの大きさで、体重約三百グラム、身長約二十三センチぐらい。子宮は胎児の頭大。六ヶ月目で、まゆ、まつ毛が生え、顔がはっきりしてくる。皮膚の表面に胎脂が付き始める。聴覚が発達し、外の音も聞いているらしい。体重約六百グラム、身長約三十センチメートルぐらい。母体の下腹部が大きくなる。胎動が感じられるようになる。七ヶ月目になると、脳が発達する。外性器が完成する。まぶたが上下に分かれ、鼻の穴が通る。皮膚はまだシワだらけ。体重約一〇〇〇グラム、身長約三十五センチメートルぐらい。母体のおなか全体が大きくなる。

 こんな状態で胎児は成長していくのだが、摩訶不思議なのは、胎芽(たいが)の段階、しかもそのごく初期の段階で、母親の腹の中で、個体発生を通じて、系統発生がくり返されているというこことだ。何故そういうことが起り得るのか、その科学的説明は次の章で行うとして、ここではそのまま不思議な現象そのものを見ておきたい。驚くべきスピードで系統発生がくり返されているのである。

 三木成夫(しげお)という人がいる。三木成夫は、1925年生まれで1987年に六十二歳で死去。戦争末期は九大で航空工学を専攻したが、戦後は東大の医学部に移り、解剖学を専攻。のちに東京医科歯科大学、東京芸術大学などで教鞭をとった。生前も知る人ぞ知るで高い評価お受けていたが、死後その評価と影響力はますます高まっており、「三木学」という言葉さえ使われるにいたっている。
 生前に出版された本は「胎児の世界」「内蔵のはたらきと子供のこころ」「人間生命の誕生」「生命形態の自然詩」「海・呼吸・古代形象」「ヒトのからだ」と偉大な学者としては比較的少ないでが、死後続々と遺稿が出版され、解剖学者・発生学者としてよりも、むしろ特異な思想家として注目されている。ここ数年来、思想界の巨人と言われる吉本隆明をはじめ、養老孟司、中村雄二郎、市川浩など、現在日本のトップクラスの思想家たちが、その著書などの中で三木成夫について言及している。

 彼の思想・生命観を一言で表現すれば、「すべての生物は、太古の昔から宇宙のリズムを宿している小宇宙である。」ということになるが、これは私のすすめる「リズム人類学」そのものである。

 では三木成夫の著書「胎児の世界」(一九八三年五月、中央公論新社)から核心部分を紹介しておく。詳しくは、是非、「胎児の世界」を読んでもらいたい。

『ニワトリの胚、いわゆる胎児は、黄味の天辺に張り付いた臍のような「胚盤」からできてくる。最初は小さな小さな<ちょん髷(まげ)>のようだ。卵を温めはじめて三日目にもうそれはできかかる。そして、あたかもこれと併行して、まん丸い血管の網が、その髷の周りの黄味の表面に姿を現す。卵黄血管網である。一方、この楊枝(ようじ)の先にも満たない胎児にも、その頸(くび)の付け根には、S字にうねった原始の心臓の管が姿を見せ、ここから細い大動脈の芽がのびて体軸を貫く。
こうして発生の初期、ニワトリの血液は心臓管から大動脈を経て、周りの卵黄血管網に流れ込み、やがてその円の周りに沿って左右からふたたび心臓管にもどるというかたちで、ぐるぐると循環を開始する。それは親の<遺産>の黄味によって胎児が養われ、刻一刻と成長していくのである。』
『「個体発生は系統発生をくり返す」という呪文のようなことばが私の頭から離れず、人
体のなりたちを知るためには、やはり、こうした動物の胎児の世界も避けて通ることはで
きないだろう。ニワトリの卵に手を出し、肉眼では見えない血管に墨を注入し、その網の目のでき方を調べようとしたのも、すべてこのような経緯からにほかならなかった。』
『原始の脊椎動物である八つ目ウナギは出羽鳥海山の麓で、硬骨魚類のニジマスは青梅の寒村で、両生類のサンショウウオは山陰の山奥で、爬虫類のアオウミガメは阿波の海岸で、それぞれ卵が採集され、その少なくとも数百個が慎重に研究室に運ばれる。そこで細心の注意を払ってそれらの卵を育てながら、毎日毎日の変化をにらみ、発生の段階を追って、それぞれの時期の標本をつくっていく。これが私の取り組んだ「比較解剖学」の研究内容である。』
『孵卵器の卵は、こうしていよいよ四日目の後半に入る。成長はめざましい。ひとまわり大きくなった勾玉(まがたま)のからだを激しくうねらせながら、胎児は心臓を怒濤のように波打たせる。』
『そこにはまぎれもない<ニワトリ>の顔があるではないか。昨夜からひとまわり大きくなったといっても、勾玉はまだせいぜい小指の先ほどだ。しかし、見るがいい。それまでの鰭(ひれ)のような前肢(ぜんし)の突起は、明らかにもう将来の翼の方向を目ざしている。その口もとは、だれが見ても、ヒヨコの嘴(くちばし)だ。やっぱり、ニワトリだった・・・。』
『ふつう、胎児の発生は、生体の顔かたちができてきたら、そこでまず一息つく。発生のスピードは、それ以降は急速に衰える。』
『陸上動物のどんな脾臓(ひぞう)も、発生の初めはみな腸管にくっついていたに相違ない。それが次第に独立していく。』
『胎児は、受胎の日から指折り数えて30日を過ぎてから僅か一週間で、あの一億年を費やした脊椎動物の上陸誌が夢のごとく再現する。』

 どうです。胎児の成長というのはまことに摩訶不思議ではありませんか。こんな摩訶不思議な現象がどうして母親の腹の中で起り得るのか? それが私の問題提起であり、みなさん方に是非考えてほしいことなのだ。

私の電子書籍「女性礼賛」は、電子書籍ショップで購入していただけると誠にありがたいと存じます。
http://honto.jp/ebook/search.html?athid=1001816269

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