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2011年6月 1日 (水)

参考(1) 第8章の第5節「平和国家のジオパーク」の補足説明

参考(1) 第8章の第5節「平和国家のジオパーク」の補足説明

私は先に,第8章の第5節「平和国家のジオパーク」を紹介し、『  スプリット」の現れるところも「祈り」の空間。道祖神やお地蔵さんなど「石神」さんも「祈り」の空間である。』と書いた。このような観点から,facebookは私のウォールに「山中の寺院と石像」と「道ばたの石像」をアップしたのだが、この点について然るべき補足説明をしておきたい。
「山中の寺院と石像」と「道ばたの石像」のほかにも「祈り」について考えなければならない問題は第8章第5節に書いた通りいろいろあるのだが,まず最初に,山中の寺院について基本的な認識を話しておきたい。
日本人は海洋民族でもあるが山岳民族でもある。漁師は平気で大海原に漕ぎだしていくが,一般的に海は生活の外にある。一般には私たちの生活と密接に関係するのは山である。古来,人々の往来は山の道で行われた。山の道はおおむね尾根筋である。
私は、学生時代山岳部で、特に京都大学山岳部の時代は先輩や同僚や後輩に教えられていろいろな経験を積んだ。そのひとつに、沢歩きというものは大変 危険であるということがある。徒渉の時、水深が膝をこえると、足をとられて流される危険性がある。だから、必ずザイルでつながって徒渉しなければならな い。一人で沢を歩くことはやめた方がいい。
旧石器時代というものは、川に橋が架かっている訳でなし、渡し船がある訳でもない。徒渉するのだ。したがって、私の経験からは、交易のルートとし てはできるだけ川を徒渉しないでいけるルートを選ばなければならない。まあ、水量が多いと渉(わた)れないと思わなければならない。すなわち、大きな川の 場合は、川の下流部とか中流部は渉(わた)れないと思わなければならないのだ。人びとの定住が始まり、集落というものができ、川舟が一般的に見られるよう になると、頼んで川向こうに渡してもらえばいい。少なくともそれまでは、大きな川の場合は、川の下流部とか中流部は渉(わた)れないと思わなければならな いのだ。
秋田のマタギが秋田を出発して数日後に八ヶ岳の麓に現れたという話を、昔、誰かから聞いたか何かで読んだことがあるが、そういう「マタギの道」というのは尾根筋をうまく利用しているのである。 古代の道のネット ワークは、歴史の連続性からいえば、近世まで継続していたのではないか。 その中には、いわゆる「マタギの道」があったと私は考えている。 そういう「マ タギの道」や古代遺跡を研究すれば、古代の交易ルートも自ずと明らかになってくると思われるが,冒頭に述べたように, 古来,人々の往来は山の道で行われたようだ。
さらに,山中の寺院に関して認識しておいてもらいたいのは,そういう往来だけでなく,黒曜石や貴重な石器の採取,鳥や獣の狩猟,山菜や木の実山中の採取などで多くの人々が山に入ったであろうということだ。平野が生活の中心になるのは比較的新しい。人々の生活は古くから山に支えらきたというのが日本の歴史だと思う。寺院の多くはそういう歴史の痕跡なのである。

次に,私は、「内なる神」との響き合い,「外なる神」との響き合いなどと言っているのだが,今ここで皆さんに強く申し上げたいのは,響き合いの「場所」のことである。詳しくは、私が以前に書いた「景観哲学」
http://www.kuniomi.gr.jp/geki/iwai/keikan00.html
を読んでいただきたいが,ここでその結論的なことを申し上げると,「山中の寺院と石像」と「道ばたの石像」というようなものが非常に重要だということである。
響き合いの「場所」というものを考えた時,圧倒的に視覚、つまり景色というものが大事である。音や匂いも大事だが,その「場所」にたたずむ時,五感の中では圧倒的に視覚によって感じるものが大きい。地域づくりの立場というか空間的な問題としては景色が大事なのである。しかし,私の景観哲学によれば,景色より風土,風土よりスピリットが重要だというのが結論であって、「山中の寺院と石像」と「道ばたの石像」というようなものが非常に重要だということなのである。
景観10年,景色100年,風土1000年,スピリット万年というのは、言い得て妙である。10年,100年,1000年,万年というのは、心に響く価値の大きさみたいなものを考えて欲しいのだが,心に響く景観は10年の価値,心に響く風景は100年の価値,心に響く風土は1000年の価値,心に響くスピリットは万年の価値があると考えていただきたい。「山中の寺院と石像」と「道ばたの石像」は万年の価値があるのである。

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